るのみ、而も一面に於て此の大欠陥を有すると共に、他の一面に於ては爛漫たる大醇と、愛す可き大美質とを有するものあるが故に、単に彼れの鄙野疎狂を咎むるは甚だ苛酷なり。何をか彼れの大醇と謂ふや、悪を憎み、冷血を忌むこと人に過ぎ、之れを攻撃するに於て、一歩も借さゞるの熱誠是れなり※[#白ゴマ、1−3−29]何をか彼れの美質と謂ふや、常に弱者の味方となりて、驕慢なるもの、権力あるものに抵抗するの侠骨是れなり、彼れが故後藤伯と事毎に衝突したりしも此れが為めにして、伯曾て彼れの強頂を患へ、切りに辞を卑うして彼を招がむとしたるも、彼は啻に伯に屈致せざりしのみならず、益々伯の失徳を追窮して毫も憚る所なかりき※[#白ゴマ、1−3−29]余は彼れが果して後藤伯の人物を正解し得たりしや否やを知らず※[#白ゴマ、1−3−29]又彼れの後藤攻撃論は、果して精確なる事実に根拠したりしや否を知ること能はず※[#白ゴマ、1−3−29]されど彼れの眼中に映じたる後藤伯は、老獪にして野心深く、私利私福を貪りて正義の観念なき奸雄なりしに似たり※[#白ゴマ、1−3−29]則ち彼は後藤伯を認めて奸雄の偶像と認めたるが故に、之れを
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