れど伊藤侯の意思は即ち政友会の意思にして、旧自由党は之れに柔順なる服従を表するの外、何等の意思もなき勢力もなきものなりと認めざる可からず。伊藤侯が単名を以て政友会を組織するに付て用意の周到なる実に斯の如きものあり。
(二)宣言及綱領
伊藤侯の発表したる宣言の大要は、既成政党の言動を論じて、或は憲法の原則と相扞挌するの病に陥りたりと為し、或は国務を以て党派の私に殉ずるの弊を致すと為し、或は宇内の大勢に対する維新の宏謨と相容れざるの陋を形したりと為せり。是れ旧自由党の言動に就て特に戒飭したる意もある可く、将た他の党派に対して非難を加へたる点もある可し。旧自由党が之れを以て毫も自由党に渉らずと弁じ、百方牽強附会の辞を費やしたる報告を配布したるは、唯だ滑稽の極といはむのみ。宣言の内容は三段に分つ可し。其の一は閣臣任免の本義を説き、其の二は政党の国家に対する関係を説き、其の三は政党の規律を説けり。閣臣任免の本義に付ては曰く、抑も閣臣の任免は憲法上の大権に属し、其簡抜択用、或は政党員よりし、或は党外の士を以てす、皆元首の自由意思に存す。而して其の已に挙げられて輔弼の職に就き、献替の
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