武百官の任命乃至議院の召集解散等、総て君主の大権に属するが如し。而して其の総裁の就任に関して何等の規定なきを以て、立憲政友会の総裁は固より一般政党の推選首領と其の性質を異にせり。要するに総裁は立憲政友会の主体にして、其の機関には非ず。換言せば伊藤侯の立憲政友会に総裁たるは、猶ほ専制国に君臨せる元首の如く、其の権能は絶対にして無限なり、一般の政党首領は、亦党の一機関たるに過ぎざるを以て、先づ政党ありて而る後に首領あれども、独り立憲政友会に在ては、総裁は即ち立憲政友会にして、立憲政友会ありて而る後に総裁あるに非ず。報知記者伊藤侯を評して、日本政党界のルイ十四世といひたるもの誠に当れり。
自由党は立憲政友会に合同すと称して解党したり。既に合同といへば立憲政友会は対等なる位地に於て自由党を迎へざる可からず。而も立憲政友会の組織は、個人の加入を許すと雖も、対等なる団体の合同を許さず。則ち旧自由党が自ら合同と称すと雖も、立憲政友会に於ては、唯だ旧自由党員たりし各個人の加入を認むるのみ。顧ふに政友会の最大多数は旧自由党員たるを見るに於いて、事実上政友会の大幹部は随つて旧自由党たる可きは無論なり。さ
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