にも之れを変更しようと試みるのは、全く時代精神の傾向を見抜いて居るからだ。其の目先の早いことは疑ひもなき天才である。
▲尾崎君はさういふ柄ではない、一体は主観的理想家であるから、其の頭脳は一定の型に這入つたやうに固まつて居る。それであるから、君の政治論は、十年前も今日も、少しも変化もなければ進歩もないやうである。進歩党を去て政友会に赴いた時は、世間から変節だとか無節操だとかいはれたが、実は変節でも何んでもない。唯だ一寸乗替汽車に乗つて見たばかりで、其の行先はチヤンと極まつて居つたのである。
▲理想家に免がれない短所は、常に自己に重きを置きすぎる弊があつて、兎角時代の精神を看過するから、実行的手段には迂濶であるやうだ。此の社会を自己の理想通りにして見たいと思ふのは、面白いことは面白いが、社会は自己の理想より進歩して居ることもあり、後れて居ることもあつて、平行して居ることは少ないものだから、理想家は何うかすると社会の孤児となるのである。
▲尾崎君の行径を見るに、多少其の傾向があるではなからうか。政友会を脱したのも、自己の理想が行き詰つた為めであつて、別段深い考があつたものと見えない。
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