考へて見ればさうかも知れない。
 ▲君がジスレリーを気取て居るといふのは有名な話であるが、近頃は君をチヤムバーレーンに較べるものがあるやうだ。チヤムバーレーンはバーミンガムの市長と為つたこともあるから、此の点だけが似て居るやうだが、人格は全く反対で、少しも似て居る処がない。
 ▲チヤムバーレーンは理想家でなくて、実行家である。但し何んな政治家でも、苟も政治家であつてみれば、何かの理想を持つて居らぬものはないのである。チヤムバーレーンにも、赤いとか白いとかいふ理想あるに違ひない。しかし彼れは自己の理想よりも更に政治家に大切なものがあるといふことを心得て居る。即ち時代の精神である。彼れが時代の精神に触接するの鋭敏なることは、殆ど天才の詩人が無意識に自然と触接するやうな趣がある。初めは自治法案に賛成して居つたが、時代精神が漸く大英統一主義に傾いて来たのを察して、潮合を計つて自治法案反対と出掛けた処などは凄い腕だ。此頃は復た保護貿易主義らしいものを唱へて居るが、元来自由貿易策は英国の国是ともいふべき位のもので、自由党でも保守党でも此の政策には今が今まで指一本も差しかねたものであるが、彼れが大胆
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