方の豪紳あり、其の他間接直接に立憲政友会の創立に与かりたるものは、孰れも所謂当代の名士にして、其自ら揚言する所を聞けば、遖ぱれ憲政の完成を期するを以て任と為し、私利を謀らず、猟官を願はざる忠誠明識の政治家なるものゝ如し。余豈其の醇駁を判じ、清濁を断ずといはむや。
且つ政友会の総裁たる伊藤侯は、久しく既成政党の弊害を憂へ、屡々公私の集会に臨みて之れが矯正の必要を唱へたるを見るに於て、其の今囘自ら起て立憲政友会を組織したるもの、蓋し亦平生の理想を行はむと欲するに外ならじ。余は此の点に於て深く侯の志を諒とし、唯熱心に侯の成功を祷ると共に侯の幕下に集まれる諸君子が、始終善く侯の指導に服従し、以て国家の為めに侯の志を成さしめむことを望むや極めて切なり。有体にいへば、余は不幸にして侯の人物及び経綸に深厚なる同情を表する能はず。されど其の六十有二の高齢に達して、意気未だ毫も衰へず、自ら政友会を発起して、政治的新生涯の人たるを期す。其の頭脳精神の強健なる、亦一代の豪といふ可し。
余は侯が政友会を発起したるを以て政治的新生涯に入るといふは何ぞや。侯が藩閥の範疇を脱して国民的政治家と為るの序幕は、疑ひ
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