藤侯は政治家としては当今第一流の人物なれども、党首としては大隈伯の対手に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]然るに憲政党は侯を誘ふて党首の位地に立たしめむとす※[#白ゴマ、1−3−29]是れ果して憲政党の利益なる乎※[#白ゴマ、1−3−29]侯にして若し憲政党に入らば、憲政党は其組織を一変して、更に侯の理想に依て着色せられたる新政党と為らむ※[#白ゴマ、1−3−29]而して自由主義は専制主義と為り、而して指導者を得る代りに命令者を得む。(三十二年八月)

     立憲政友会の創立及び其創立者

      (一)新組織の政党
 立憲政友会の創立は、確かに政治上の一進歩なり。少くとも近かき未来に於ける局面展開の動力たる可きは、何人も疑はざる所なり。但だ其の組織の果して健全なる発達を遂げ、其実力形貌共に果して能く完全なる政党たるを得可きや否やは、是れ固より前途に横はれる未解の設題たるのみ。余は敢て之が解釈を今日に試みむといふには非ず。
 立憲政友会の創立者を見るに、資望朝野の間に高き伊藤侯以下或は曾て台閣に列したる人あり、或は前日まで一党の領袖たりし人あり、或は敏腕の名ある旧官吏あり、或は地
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