治家の利益たるを知らざる可からず※[#白ゴマ、1−3−29]伯は他の政治家に比して割合に変説少きに拘らず、伯の政敵は、主として伯の変説最も著しきを言ふ※[#白ゴマ、1−3−29]是れ他の政治家は意見を発表すること少なきが故に、其変説世に知らるゝこと少なく、伯は意見を発表すること多きが故に、其言質を執らへらるゝこと随て多きのみ。
 されど政治家は道徳家に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]苟も国民の利害、国家の公問題と両立せざる意見は、之れを守るも政治家の名誉に非ず、之れを捨つるも政治家の恥辱に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]変ず可くして変じ、捨つ可くして捨つ、唯自己の智見と良心とに是れ任す可きのみ※[#白ゴマ、1−3−29]特に国民を指導する党首に於て最も其然るを見る。
 伊藤侯は大隈伯の如く未来の問題を語ること少なく、其語るや大抵過去帳の展読のみ※[#白ゴマ、1−3−29]故に其言質を作ること稀れなる代りに、其発表せる意見は、国民の記憶を喚び起すの力あれども、国民を指導するの生命あるもの甚だ希れなり※[#白ゴマ、1−3−29]是れ亦党首として大隈伯に及ばざり所以なり。
 之を要するに、伊
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