り。彼は明治の歴史に於て最も重要なる部分を働らきたる一人なり。彼は自ら首相となりて内閣を組織したること前後二囘、其の内閣を組織せざる場合に於ても、屡々内閣の製造者たることありて、其の発言は往々内閣の更迭に影響を示したり。彼は所謂る元老団の要素として天皇陛下より特絶の待遇を受け、内外の重大なる国務は、一として彼れの与かり知らざるものなく、恐らくは最後の真理を最初に聞くべき位地に居るものは彼なるべし。蓋し日清戦争以来、軍事は政治機関の強部を占め、所謂る戦後経営なるものゝ如き、畢竟軍事を主として財政を従としたる立案たるに過ぎざるの観あり。之れに加ふるに日露大戦の経験を以てしたるに於て総ての政治問題は殆ど軍事万能主義に依て左右せらるゝの傾向を現はせり。則ち是の時に当りて、政府の枢機は軍事を心軸として囘旋するが故に、政治問題の秘鍵を握るものは亦軍事当局者なりと推定するも可なり。而して山県公爵は軍国の大首領として優越的威望を有するのみならず、軍事と政治の関係を研究するに於て又他の元老の何人にも勝れるは言ふを俟たず。斯くの如き威望と長所とを兼備せる山県公爵が最も早く政治問題の極意に通じ得べき地位に在
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