国家毫も活動する能はざるに至らむ、是れ我輩が閣下に向つて断然たる辞職を勧告する所以なり。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]三十三※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山県相公閣下、我輩は閣下頃ろ辞任の意あると聞き、窃かに閣下が処决の時機を得たるを賀したりしに、今や又閣下が策士の言に動かされて忽ち留任の心を起したりといふを聞きては、我輩深く閣下の聡明頗る蔽はるゝ所あるを惜まずむばあらず、閣下に留任を勧告するものは自由党の毫も畏る可からざると、伊藤侯の遽かに起つの意思なきとを以て閣下の聡明を蔽はむとすと雖も是れ姑息の計を進めて反つて閣下の過失を再三せしめむとするの妖言なり、閣下が既往三年間の歴史を観るに閣下の過失は実に此の類の妖言に原本したるもの多し、閣下は元来謹厚慎密にして進退を苟もするの人に非ず、而も其の属僚を有すること他の元勲よりも多数なるを以て、動もすれば佞嬖の小人に擁せられて不測の過失に陥ること少なきに非ず、今に於て尚ほ自ら悟らずむば、閣下恐らく恢復す可からざる汚名の下に没了せむ。
 相公閣下、閣下は政治家として他の元勲に卓出したる技倆を有するに非ず、而も其の内
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