て狎る可からざるを思ひ、伊藤侯に接するものは、其の悦ぶ可くして畏る可からざるを感ず※[#白ゴマ、1−3−29]是れ其の均しく貴族的姿致あるに拘らず、一は武骨を以て勝ち、一は文采を以て優る所以なり。
 伊藤侯の辞令は滑脱婉麗にして些の圭角なし、以て夜会の酬接に用ゆ可く※[#白ゴマ、1−3−29]大隈伯の辞令は機鉾鏃々として応答太だ儁、以て戦国の外交に用ゆ可し※[#白ゴマ、1−3−29]其の言を発して情致あるは伊藤侯の長所にして、其の語を行ること奇警なるは大隈伯の妙処なり※[#白ゴマ、1−3−29]若し夫れ談論滔々として竭きざるの概に至ては、未だ遽かに軒輊し難きものありと雖も、伊藤侯の音吐朗徹声調抑揚あるは、演壇の雄弁として大隈伯に優ること一等※[#白ゴマ、1−3−29]唯だ精明深刻舌端に霜気あり、座談久うして益々聴者を倦ましめざるは是れ寧ろ大隈伯の特絶にして、其の一たび佳境に到れば、眉目軒昂英気颯爽として満座皆動く※[#白ゴマ、1−3−29]故に大隈伯の雄弁は対話に適し、伊藤侯の雄弁は公会に利あり。
 才を愛し士を好むに於て、伊藤侯と大隈伯とは共に他の元勲諸公に過ぐ※[#白ゴマ、1−3−
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