藩閥武断派の代表者と為したりき、今や閣下の本領は全く消磨して、精刻峻急の角度を取り除きたる代りに、秩序もなく、節制もなく、官紀を紊乱し、行政機関を荒廃して、唯だ内閣一日の姑息を謀らむとす何ぞ其の老ゆるの太甚しきや。
思ふに閣下は漫に属僚の小献策に気触れて大局を観るの眼識を失ひ、単に議院政略に成功するを以て能事と為したるもの、是れ実に閣下が政治の大道を踏み外づしたる所以なり、蓋し彼の属僚輩の頭脳には、唯だ内閣を出来得るだけ永く維持せんと欲する目的の外には一物なく、而も此の目的は、国家経綸の抱負より来れるには非ずして、実は官職を生活問題より見たる劣情より出でたるに過ぎず、而して彼等が生存競争の大敵として常に忌憚するものは党人なるが故に、彼等は先づ此の党人の猟官心を抑制するに於て如何なる手段方法をも顧みざるに至れり、是れ議院政略の由て生ずる所にして、而も其の之れを施して底止する所なきや、反つて内閣の威信と行政機関の壊敗とを招くに至れるを知らざるなり。
※[#始め二重括弧、1−2−54]十一※[#終わり二重括弧、1−2−55]
山県相公閣下、閣下が属僚の進言を納れて柄にもなき
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