議院政略を乱用したる結果は、殆ど政治をして私利私慾を目的とする一種の営業たらしめ、其の争ふ所は、官職若くは利益上の条件にして敵味方の分かるゝ起点は亦唯だ此の一事に在り、是れ固より政治階級の総堕落といふの外なしと雖も、一は閣下等を包擁せる属僚の行動も、亦与つて大に咎めありと断言せざる可からず。
 凡そ今の藩閥家にして、最も多数の属僚を有するものは閣下に過ぐる者なく、而して其の属僚の為めに政治上の過失を犯したるもの、亦閣下より太甚しきものあらじ、伊藤侯は自己の伎倆を信ずるの政治家なるを以て閣下に比すれば属僚を有すること少なきのみならず、其の属僚の侯に対するや随がつて唯だ服従的状態を有するに過ぎずと雖も、而も尚ほ属僚の為めに大事を誤まらるゝことなきに非ず、况むや閣下に於てをや、蓋し閣下は常に政治家の位地に※[#「糸+二点しんにょうの遣」、第4水準2−84−58]恋する人なるも、未だ政治家の任務に付て自己の伎倆を信ずる人に非ず、故に属僚の閣下に対するや、始めより服従的状態を有せずして、寧ろ顧問的関係若くは師伝的関係を有せり、是れ閣下の内閣が属僚政治の為めに其の威信を失ひたる所以なり。
 相公閣
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