条約実施上の交渉案件にして、今も尚ほ満足なる解答を得ざるもの多きが為めに、彼等は已むを得ずして当局者以外の勢力家に協議を求むることありといふ、特に私立学校令に付て、文部当局者が外交官の反対の為に左支右吾の行動ありしは、殆ど公然の事実にして、凡て此般の事、其の帝国政府の威信に関するや頗る大なりと謂はざる可からず。
相公閣下、閣下は元来職守に厳に、職権を※[#「厂+万」、第3水準1−14−84]行するを以て高名なりし人なり、井上伯は閣下に比すれば、機略に富み決断に長ずれども、其の趺宕の性、動もすれば法律規則を無視するの弊あり、伊藤侯は閣下に比すれば、立法の才、組織の能力に於て超絶すれども、其の文采言語の多き割合には其の実行躬践の分量甚だ少なきの欠点あり、閣下は固より伊藤侯の才能なく井上伯の胆気なしと雖も、而も曾て重きを藩閥政府に有したるは、実に官府の秩序と威権とを保維するを以て行政の要と為したるに由れり、其の或は極端なる法治主義に偏して時に精刻峻急に陥るの病ひあるのみならず規摸も亦甚だ狭小にして、官権拡張の外殆ど大なる主張なかりしに拘らず、我輩は尚ほ此点に於ける閣下の本領を認めて、所謂る
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