彼れに於て見たる人格には、胆識雄邁、覇気人を圧する大隈伯の英姿なく、聡敏濶達、才情円熟なる伊藤侯の風神なく、其の清※[#「やまいだれ+瞿」、第3水準1−88−62]孤峭にして、儀容の端※[#「殼/心」、43−上−8]なる、其の弁論の直截明晰にして而も謹厳なる、自ら是れ義人若くは愛国者の典型なり。土佐人士には二種の系統あり、一は冷脳にして利害に敏なる策士肌の系統にして、故後藤伯之れを代表し、大石正巳林有造等の人格は之れに属せり。一は温情にして理想に富める君子肌の系統にして、板垣伯之れを代表し、故馬場辰猪植木枝盛等の人格之れに属せり。谷干城子の如きも、孰れかといへば寧ろ後者に近かく、唯だ其の板垣伯と異る所は、主義のみ、信条のみ、有体に評すれば、谷子は保守主義の板垣伯にして、板垣伯は進歩主義の谷子なり、更に語を換へていへば、谷子は東洋的板垣伯にして、板垣伯は欧化したる谷子なり。
記者は彼れの応接間を辞せむとしつゝ、端なく三個の額面に注目を導かれぬ。彼れは記者の問に応じて身を起し、先づ南面の壁上に掛れる金縁の大額を説明して曰く、
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是れ普仏戦争後に於ける第一囘の仏国国民議
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