の社会事業は、又た満腔の敬意を以て之れを迎へざること能はざりき。彼れは社会改良の必要なる所以を説て曰く、
[#ここから1字下げ]
憲政の完美を謀らむとせば、社会の根柢を鞏固ならしめざる可からず。社会の公徳腐敗しては、独り政治の健全ならむことを望むも難からずや。而して社会の公徳は、宗教家若くは道学先生の説教のみにて維持し得可きに非ざれば、先づ有形上の礼節作法より矯正し始むるを要す。是れ余が風俗改良に着手したる所以なり。
[#ここで字下げ終わり]
彼れは※[#「女+尾」、第3水準1−15−81]々として順序正しく語り出だせり、彼れは風俗改良の手段としては、次に国民の音楽にも注意せざる可からずといひて、泰西の楽譜曲調を直訳したる学校音楽は、日本国民の趣味に適せざるがゆゑに之れを改良すべき必要ありと説きたり。彼れは憐れなる盲人の生活状態を進めむが為に、盲人教育の必要ありと説きたり。彼れは鰥寡孤独の救恤男女労働者の保護は、共に国家の責任に属する重要なる問題なるがゆゑに、前年内務大臣たりし時、既に属僚に命じて調査せしめたることありと説きたり。彼れは之れを説きつゝ、或は瞑目して熟考する如く、或は眉を
前へ 次へ
全350ページ中142ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング