歩は、総べて国民的運動の結果なりと思惟せり。
唯だ伯は善く時代精神を摂取し、善く人民の希望と一致するの性格を有すと雖も、之れを行ふの権力と久しく遠ざかりたるを以て、政治上に於ては長く逆境の人たらざるを得ざりき、然れども伯は其の朝に在ると野に在るとを問はず、常に人民の代表者たるを失はざるがゆゑに、其の社会的境遇は甚だ幸福にして、其の生涯は頗る快活なり、伯は不幸にして権力を有せざるがゆゑに、至尊に侍して献替の任を尽くすに由なしと雖も、人民の代表者として、間接に国家に貢献するの功は、復た没す可からざるものあり。特に日本国民の大飛躍を試みたる今日に際し、伯の如き人民の代表者を民間に有するは、国家の代表者として伊藤侯を朝廷に有すると相待つて、時局を運為するの二大勢力たるべし。
凡そ国際問題は政府と政府との間に於て主として解决せらると雖も、最後の解决者は寧ろ国民なりといはざる可からず。故に内に在て民心を統一し、外に向て人民の思想感情を代表する人物の存在は、国際問題の解决に対して大なる共力となるべし。今や日露戦争は啻に列国政府の注意を牽引したるのみならず、又た深く列国人民の耳目を動かしたり、随つ
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