て其の人民の思想感情が、其の政府の政策に隠然たる影響を与ふるものあるを知るときは、我日本人民と環視列国人民との間に思想の交通を開くの必要あるは論ずるを待たず。而して大隈伯の如きは思想交通の一機関として頗る有効なる働らきを為しつゝあるを記憶せざる可からず。
元来大隈伯は、未だ一たびも海外に出でたることなしと雖ども、其の屡々外務の当局者たることありしと、其の外交的辞令に嫻へる故とを以て、其の外人に知らるゝことは伊藤侯に亜げり。故に伯が野に在るの時と雖も、外国使臣は常に伯の門に出入して伯と意見を交換するを喜び、又た来遊外人の重もなるものは、其の公人たると私人たるとに論なく、大抵伯を訪問して其の謦咳に接せざる者なし。伯は此等の外人を待遇するに於て亦能く親切鄭寧を尽くすがゆゑに、伯と会見して不快の感を残すものは一人もあらずといへり。而も伯は此の場合に於て、最も善良にして最も進歩したる日本人民の思想を紹介するがゆゑに、其の外交上に寄与するの利益は甚だ偉大ならむ。伯は実に無冠の外務大臣として外人と応接するものにあらずや。
日露戦争起るや、外国の新聞記者は、軍事通信の任務を帯びて続々我国に来朝せり
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