は眞の黨紀振肅に非ず[#「黨紀振肅は眞の黨紀振肅に非ず」に傍点]、星除名論は亦唯だ嫉妬的感情の發現に外ならざればなり[#「星除名論は亦唯だ嫉妬的感情の發現に外ならざればなり」に傍点]。
有體にいへば末松、江原等の君子人が、尚ほ黨の平和を口にして滔々たる濁流と浮沈するは頗る解す可からざるものあるに似たり※[#白ゴマ、1−3−29]されど自由黨の現状を維持するの必要最も大なるに於ては[#「されど自由黨の現状を維持するの必要最も大なるに於ては」に白丸傍点]、黨紀の振肅よりも先づ黨の平和を計らざる可からず[#「黨紀の振肅よりも先づ黨の平和を計らざる可からず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]黨の平和を計るが爲には勢ひ星除名論を鎭撫せざる可からず[#「黨の平和を計るが爲には勢ひ星除名論を鎭撫せざる可からず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば[#「何となれば」に白丸傍点]、たとひ星除名論を實行するも[#「たとひ星除名論を實行するも」に白丸傍点]、自由黨の腐敗は固より救ふに足らず[#「自由黨の腐敗は固より救ふに足らず」に白丸傍点]、適々以て自由黨の分裂を見るに過ぎざればなり[#「適々以て自由黨の分裂を見るに過ぎざればなり」に白丸傍点]。
(六)排星運動の遺算
排星運動には確かに二個の遺算ありき※[#白ゴマ、1−3−29]第一星氏の位地を誤解したるより來り[#「星氏の位地を誤解したるより來り」に丸傍点]、第二伊藤侯の意思と衝突したるより來れり[#「伊藤侯の意思と衝突したるより來れり」に丸傍点]。
星除名論者は以爲らく、横濱埋立事件に關して星氏に反對する同盟中には、星氏の直參と認む可きもの少なからず※[#白ゴマ、1−3−29]是れ彼れが全く自由黨員の心を失ひたる證なり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れと進退を同うするもの恐らくは二三子のみならむ※[#白ゴマ、1−3−29]今や彼れの自由黨に於ける位置は殆ど孤立なりと※[#白ゴマ、1−3−29]されど彼れに反對するものは悉く除名論者に非ず[#「されど彼れに反對するものは悉く除名論者に非ず」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼等は決して[#「彼等は決して」に傍点]『星の天下[#「星の天下」に傍点]』を爭ふて之を他人に移さむとするものゝみに非ず[#「を爭ふて之を他人に移さむとするものゝみに非ず」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]多數の自由黨員は[#「多數の自由黨員は」に傍点]、尚依然として[#「尚依然として」に傍点]『星の天下[#「星の天下」に傍点]』たらむことを望めり[#「たらむことを望めり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]『星の天下[#「星の天下」に傍点]』を奪はむとするものは唯だ星氏の爲に失意の地に落ちたる一部の人士のみ[#「を奪はむとするものは唯だ星氏の爲に失意の地に落ちたる一部の人士のみ」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]横濱埋立事件に關して星氏に反對せる信州組の如きは[#「横濱埋立事件に關して星氏に反對せる信州組の如きは」に傍点]、實は星氏を敵とするに非ずして[#「實は星氏を敵とするに非ずして」に傍点]、小山田某に向て利益分配の強請を爲したる一種のユスリたるに過ぎず[#「小山田某に向て利益分配の強請を爲したる一種のユスリたるに過ぎず」に傍点]、之れを認めて星氏に對する政治的謀叛と爲したるは[#「之れを認めて星氏に對する政治的謀叛と爲したるは」に傍点]、排星運動の第一遺算に非ずして何ぞや[#「排星運動の第一遺算に非ずして何ぞや」に傍点]。
且つ星氏を除名せば、隨て西郷内相を排斥せざる可からず※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば西郷内相の横濱埋立事件に關係せるは星氏の之れに關係せる事情に同じければなり。而も西郷内相の排斥は、現内閣破壞の動機と爲るを認むるに於て、星除名論者は如何にして其事後を善くせんとする乎※[#白ゴマ、1−3−29]土佐派の目的は是れに依りて伊藤内閣を出現せしめんとするに在らむ※[#白ゴマ、1−3−29]されど伊藤侯は決して逆取の手段を斷行する政治家に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]たとひ侯の野心勃々たるを以てすと雖も、其手を下だすや常に順境に於てするを得意とせり※[#白ゴマ、1−3−29]若し山縣内閣にして自然に崩壞する日來れば、侯は固より其後を受くるを躊躇するものに非ず※[#白ゴマ、1−3−29]獨り自ら現状打破の主動力と爲るは、侯の本意に非るを奈何せむや※[#白ゴマ、1−3−29]況むや侯の最も親善なる西郷侯を死地に陷るゝが如き隱謀の張本人たるは、侯の甚だ懼るゝ所なるをや※[#白ゴマ、1−3−29]星除名論は[#「星除名論は」に傍点]、此點に於て侯の意思と衝突したるを以て[#「此點に於て侯の意思と衝突したるを以て」に傍点]、侯の聲援に須つ所ありし土佐派は[#「侯の聲援に須つ所ありし土佐派は」に傍点]、遂に最初の計畫を中止せざる可からず[#「遂に最初の計畫を中止せざる可からず」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]是れ排星運動に於ける第二の遺算なり[#「是れ排星運動に於ける第二の遺算なり」に傍点]。
(七)組織改造論
星除名論に失敗したる土佐派は、更に組織改造論を唱へて第二の排星運動を開始せり※[#白ゴマ、1−3−29]蓋し是に依りて板垣總理の時代を復活し[#「蓋し是に依りて板垣總理の時代を復活し」に傍点]、土佐派の天下を再興し[#「土佐派の天下を再興し」に傍点]、以て星氏の勢力を削らむと欲するに外ならず[#「以て星氏の勢力を削らむと欲するに外ならず」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]されど星除名論の失敗は[#「されど星除名論の失敗は」に白丸傍点]、星氏の勝利を意味し[#「星氏の勝利を意味し」に白丸傍点]、星氏の勝利は[#「星氏の勝利は」に白丸傍点]、星氏の自由黨に於ける勢力を確保したるものなり[#「星氏の自由黨に於ける勢力を確保したるものなり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼は既に一着を贏ち得たり[#「彼は既に一着を贏ち得たり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]攻守の位地は忽ち一轉せり[#「攻守の位地は忽ち一轉せり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼は關東東北九州の諸團體に傳令して組織改造に反對するの決議を爲さしめたり[#「彼は關東東北九州の諸團體に傳令して組織改造に反對するの決議を爲さしめたり」に白丸傍点]、排星運動の計畫者は[#「排星運動の計畫者は」に白丸傍点]、今や星氏の逆襲を受けて意氣漸く沮喪せむとせり[#「今や星氏の逆襲を受けて意氣漸く沮喪せむとせり」に白丸傍点]、星氏は粗硬に似て實は機敏なる所あり[#「星氏は粗硬に似て實は機敏なる所あり」に白丸傍点]、土佐派は智巧なる如くにして反つて迂拙[#「土佐派は智巧なる如くにして反つて迂拙」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]自由黨は依然として星氏の手中に在り[#「自由黨は依然として星氏の手中に在り」に白丸傍点]。
(八)政權分配論
星氏は組織變更反對決議を爲さしむと同時に、一方に於ては政權分配論を唱へて、局面一變の新手段を採りたり※[#白ゴマ、1−3−29]是れ自己に對する攻撃の鋭鋒を他に轉ぜしめむとするの權謀なりと雖も、亦自由黨の黨略としても時機を得たるものと謂ふ可し。
現内閣は自由黨と休戚を共にすると揚言したるに拘らず、其爲す所は、皆自由黨の初志と背馳したりき※[#白ゴマ、1−3−29]特に文官任用令を正して政黨員任官の門戸を遮斷したるは、自由黨の最も不快とする所なり※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば是れ自由黨をして單に政府に盲從せしめ、無意義の提携を繼續せしむるの目的なればなり※[#白ゴマ、1−3−29]故に政權分配問題は[#「故に政權分配問題は」に白丸傍点]、自由黨の死活問題なり[#「自由黨の死活問題なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]たとひ今日星氏に依て唱へらるる事となしとするも[#「たとひ今日星氏に依て唱へらるる事となしとするも」に白丸傍点]、其早晩自由黨の大問題と爲るに至る可きは自然の數なり[#「其早晩自由黨の大問題と爲るに至る可きは自然の數なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]今や自由黨の現内閣に對する不平漸く長ずるを認むるに於て、星氏の機心敏慧なる、此黨情を利用して局面を一變せむとす※[#白ゴマ、1−3−29]其智計土佐派を出づること一等なりと謂ふ可し。
(九)自由黨の實際的首領
星亨氏は眞に自由黨の實際的首領なり※[#白ゴマ、1−3−29]彼は政治上の公徳を解するの君子人に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]されど其百折撓まざるの堅志と、其手段の善惡を選まずして邁往するの勇氣とは、自由黨を指導するの首領として最も適當なる人物なり※[#白ゴマ、1−3−29]世間或は彼れを以て浮浪の親方と爲すものあれども[#「世間或は彼れを以て浮浪の親方と爲すものあれども」に傍点]、自由黨の首領たるものは[#「自由黨の首領たるものは」に傍点]、寧ろ親方たる資質あるものに竢つ所あり[#「寧ろ親方たる資質あるものに竢つ所あり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]收賄と言ふ勿れ[#「收賄と言ふ勿れ」に傍点]、議員買收と言ふ勿れ[#「議員買收と言ふ勿れ」に傍点]、今の自由黨を指導するの動力は[#「今の自由黨を指導するの動力は」に傍点]、内治問題に非ず[#「内治問題に非ず」に傍点]、外交政策に非ずして[#「外交政策に非ずして」に傍点]、唯だ胃腑の問題のみ[#「唯だ胃腑の問題のみ」に傍点]、財嚢問題のみ[#「財嚢問題のみ」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れ星氏の如きは即ち此問題の解釋者として一種の伎倆を有する英雄なり[#「彼れ星氏の如きは即ち此問題の解釋者として一種の伎倆を有する英雄なり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れなくむば自由黨は殆ど亡びむ[#「彼れなくむば自由黨は殆ど亡びむ」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは自由黨の純代表者にして[#「彼れは自由黨の純代表者にして」に傍点]、又其司命者なり[#「又其司命者なり」に傍点]、自由黨は果して彼れに背き得可き乎[#「自由黨は果して彼れに背き得可き乎」に傍点]。(三十二年十一月)
田中正造
田中正造氏
下院の名物
年々開會する帝國議會の下院に於て[#「年々開會する帝國議會の下院に於て」に傍点]、常に奇異なる風采言動を以て[#「常に奇異なる風采言動を以て」に傍点]、無限の興味を傍聽者に與ふる一人物あり[#「無限の興味を傍聽者に與ふる一人物あり」に傍点]。其山猫の人化したる的の面既に甚だ愛嬌津々たるのみならず[#「其山猫の人化したる的の面既に甚だ愛嬌津々たるのみならず」に傍点]、其選擧區民より贈與せられたりといへる五所紋付黒木綿の羽織を着用して[#「其選擧區民より贈與せられたりといへる五所紋付黒木綿の羽織を着用して」に傍点]、古武士の純朴を存する所亦頗る異彩あり[#「古武士の純朴を存する所亦頗る異彩あり」に傍点]、彼は誰れぞ[#「彼は誰れぞ」に傍点]、下院第一等の名物田中正造氏其人なり[#「下院第一等の名物田中正造氏其人なり」に傍点]。
彼は多くの場合に於て極めて沈默なりと雖も、是れ唯だ眠れる獅子の沈默のみ[#「是れ唯だ眠れる獅子の沈默のみ」に白丸傍点]、其勃然として一たび自席を起つや口を開けば惡罵百出[#「其勃然として一たび自席を起つや口を開けば惡罵百出」に白丸傍点]、瞋目戟手と相應じて[#「瞋目戟手と相應じて」に白丸傍点]、猛氣殆ど當る可からず[#「猛氣殆ど當る可からず」に白丸傍点]、曾て原敬氏を罵つて國賊と爲すや、叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]咆哮、奮躍趺宕、恰も狂するものゝ如く、人をして全身の血管悉く破裂せざるかを疑はしめたりき※[#白ゴマ、1−3−29]當時某代議士は彼れが感情の滿潮に達するを觀て其或は氣絶せんことを恐れ[#「當時某代議士
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