に赴き、始めて伏魔殿の主人公たる皇帝に對面したる時、蜜の如き辭令に富みたる皇帝は、侯に望むに永く京城に淹留して啓沃の任に當らむことを以てし、且つ自ら金尺大綬章を賜はりて、侯を尊信するの意を表したりき。其の際侯は此の人格上の一問題たる皇帝を如何に觀たるかを知る能はずと雖ども[#「其の際侯は此の人格上の一問題たる皇帝を如何に觀たるかを知る能はずと雖ども」に白丸傍点]、兎に角應酬の結果は極めて良好にして[#「兎に角應酬の結果は極めて良好にして」に白丸傍点]、日韓兩國の新關係も[#「日韓兩國の新關係も」に白丸傍点]、大體に於て侯と皇帝との間に或る默契の成れるを想はしめたりき[#「大體に於て侯と皇帝との間に或る默契の成れるを想はしめたりき」に白丸傍点]。
昨年十一月侯が日韓協約締結の大命を啣みて再び韓國に使するや、皇帝は侯の奏陳を聞て頗る驚惑し、次ぐに悲痛の語を以てせり。曰く、韓國は曾て支那の正朔を奉じて其の屬邦たることありしも、未だ外交權を之れに委任したることあらざりき。今卿の提示せる協約は、朕が祖宗五百年の社稷を全く滅亡せしむるものなりと。其の聲惻々として人の腸を斷つに足れり[#「其の聲惻
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