6]伊藤侯だとか、大隈伯だとか、東郷大將だとかいふ人物は、所謂る歴史的豪傑であつて、田中正造翁などは口碑的豪傑である。
※[#丸中黒、1−3−26]日本には口碑的豪傑が極めて多い。單に徳川時代のみに就ていふも、大久保彦左衞門、佐倉宗五郎、幡隨院長兵衞、荒木又右衞門なんどいふ連中は、歴史的豪傑としては殘つて居ないが、兒童走卒も尚ほ能く其の名を記憶して嘖々是れを傳唱するのを思へば、彼等は正さしく口碑的豪傑の尤なるものである。
※[#丸中黒、1−3−26]日本に講談師とか浪花節語りとかいふ藝人の起つたのは、恐らくは口碑的豪傑の多く輩出した爲であらふと考へる。而して此等の藝人に依て、口碑的豪傑が益々市井の間に持て囃さるゝやうになつたのである。
※[#丸中黒、1−3−26]田中正造翁は隨分新聞紙の種を供給する人物であるが、歴史家からは多分淘汰されて仕舞ふだらうと思ふ。然しながら翁は歴史家に無視せらるゝと同時に[#「翁は歴史家に無視せらるゝと同時に」に白丸傍点]、必らず講談師や浪花節語りに拾ひ上げられて[#「必らず講談師や浪花節語りに拾ひ上げられて」に白丸傍点]、寄席の高座から口碑的豪傑とな
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