つて現はるゝの時があるに相違ない[#「寄席の高座から口碑的豪傑となつて現はるゝの時があるに相違ない」に白丸傍点]。
※[#丸中黒、1−3−26]翁は一度は代議士ともなつて、議會でも名物の一人に數へられた男であるが、翁は恰も日蓮宗徒が南無妙法蓮華經を一心に唱ふるやうに、始終唯だ鑛毒問題を怒鳴り通して居たのである。
※[#丸中黒、1−3−26]近頃翁は官吏侮辱罪で訴へられて居る。相手は巡査とか村長とかであるが、相手は誰れであらうとも、鑛毒地の人民を迫害すると信ずるものは、總て之れを敵として奮鬪する。これが翁の終生の運動である。翁は此の運動の爲に、あらゆる悲慘をも甞め、あらゆる困難にも逢遇した。然し翁は悉く之れに打ち克つだけの勇氣と忍耐とを有して居る。
※[#丸中黒、1−3−26]金も欲しくない、命も要らない、名譽を望まないで、唯だ善と思ふ目的に向つて、側目もふらずに突進することは、常識本位の人には出來ぬ藝だ。世間は此の類の熱血漢を一種の精神病者と認むるのである。但し義人とか獻身者とかいふ奴は大抵精神病者と見えるもので、其の言動は往々軌道を外づれて居るものだ。
※[#丸中黒、1−3−
前へ
次へ
全497ページ中494ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング