せむとして、伊東巳代治男を外務大臣候補者に推薦したる事實ありしは、豈其の明白なる證據に非ずや、而も一朝憲政黨内閣倒れて閣下の内閣起るに及で、彼は恰も風雲の際會を得たる惡龍の如く、遽かに飛舞騰躍して自由黨を惑亂し、曾て自由黨の中堅たる土佐派すらも殆ど屏息して彼れの指命を受くるの止むを得ざるに至る、亦憐まざる可けむや。
 世間或は彼れを時代の權化として、其の技倆手腕に畏服するものあり、我輩を以て彼れを觀れば[#「我輩を以て彼れを觀れば」に白丸傍点]、彼は高等長脇差の隊長にして[#「彼は高等長脇差の隊長にして」に白丸傍点]、僅に政治家の外套を着けたる一個の野人のみ[#「僅に政治家の外套を着けたる一個の野人のみ」に白丸傍点]、其の最も長ずる所は[#「其の最も長ずる所は」に白丸傍点]、唯だ善惡是非を問はずして然諾を實行するの大膽即ち是れなり[#「唯だ善惡是非を問はずして然諾を實行するの大膽即ち是れなり」に白丸傍点]、彼れが政治上の罪惡を犯したるも此に在ると同時に、彼れが黨與の歡心を得るも亦此に在り、而して政治道徳の問題の如きに至ては、彼れ固より冷眼を以て之れを度外に附したり、是れ其の爲す所一も常
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