れば彼は此問題を以て人情正義の問題と爲すものなればなり」に白丸傍点]。
余は此問題に關して、全然彼れの主張[#「主張」に白三角傍点]に同意するものに非ず※[#白ゴマ、1−3−29]されど余は彼れの良心[#「良心」に白三角傍点]に同感せざるなき能はず※[#白ゴマ、1−3−29]其主張の誇大にして[#「其主張の誇大にして」に傍点]、且つ論理の極端なる[#「且つ論理の極端なる」に傍点]、殆ど無經綸に近かきものありと雖も[#「殆ど無經綸に近かきものありと雖も」に傍点]、其所信を固守して一點調和の意義を含まざるは[#「其所信を固守して一點調和の意義を含まざるは」に傍点]、决して利害に制せらるゝ政治家の夢想し得る所に非ず[#「决して利害に制せらるゝ政治家の夢想し得る所に非ず」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]是れ彼れに良心の健全なるものあればなり[#「是れ彼れに良心の健全なるものあればなり」に傍点]。
誠實なる方便家
誠實是れ好方便なり[#「誠實是れ好方便なり」に白ゴマ傍点]とは、屡々余の聽く所の語なれども、之を實行するものは甚だ稀なり※[#白ゴマ、1−3−29]世間誠實の君子少なきに非ず※[#白ゴマ、1−3−29]されど單純なる誠實は好方便と爲らず※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば是れ無意義の誠實なればなり※[#白ゴマ、1−3−29]蓋し古へより能く人心を收攬するものは、决して術數權謀の士に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]されど單純なる誠實も亦た能く衆心を收攬する所以に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]唯だ誠實の士にして智慧を用ゐるもの[#「唯だ誠實の士にして智慧を用ゐるもの」に白丸傍点]、始めて能く誠實をして好方便たらしむるを得るのみ[#「始めて能く誠實をして好方便たらしむるを得るのみ」に白丸傍点]、田中正造氏の如き稍々之れを得たり[#「田中正造氏の如き稍々之れを得たり」に白丸傍点]。
彼は熱血男兒なり[#「彼は熱血男兒なり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]されど彼は决して直情徑行の純人に非ず[#「されど彼は决して直情徑行の純人に非ず」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼は粗放なる如くにして[#「彼は粗放なる如くにして」に傍点]、其實精細の算勘に富み[#「其實精細の算勘に富み」に傍点]、直角的なる如くにして[#「直角的なる如くにして」に傍点]、反つて曲線的の行路を歩む[#「反つて曲線的の行路を歩む」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]唯だ惡を知りて惡を行はず[#「唯だ惡を知りて惡を行はず」に白丸傍点]、利害に明かにして利害に拘束せられざる[#「利害に明かにして利害に拘束せられざる」に白丸傍点]、乃ち是れ彼れの彼れたる所以なり[#「乃ち是れ彼れの彼れたる所以なり」に白丸傍点]。
試に見よ、鑛毒問題は古河市兵衞氏と地方一部の農民との間に起れる一小事件のみ※[#白ゴマ、1−3−29]决して之れを天下の大問題と謂ふ可からず※[#白ゴマ、1−3−29]而も田中氏が一たび此問題を持把して下院に現はるゝや[#「而も田中氏が一たび此問題を持把して下院に現はるゝや」に傍点]、其聲頗る大にして[#「其聲頗る大にして」に傍点]、終に下院を動かし[#「終に下院を動かし」に傍点]、政府を動かし復た之れを一小事件と認むる能はざるに至らしめたり[#「政府を動かし復た之れを一小事件と認むる能はざるに至らしめたり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼は此問題に於て老獪縱横なる後藤伯と爭へり[#「彼は此問題に於て老獪縱横なる後藤伯と爭へり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]才辯多智なる陸奧伯と爭へり[#「才辯多智なる陸奧伯と爭へり」に傍点]、而して一方に於ては[#「而して一方に於ては」に傍点]、大膽にして術數ある古河氏を相手として[#「大膽にして術數ある古河氏を相手として」に傍点]、不撓不屈の戰鬪を繼續したり[#「不撓不屈の戰鬪を繼續したり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]種々の誘惑種々の恐嚇種々の壓力は[#「種々の誘惑種々の恐嚇種々の壓力は」に傍点]、絶えず彼れ及び彼の代表せる地方民を掩襲したるに拘らず[#「絶えず彼れ及び彼の代表せる地方民を掩襲したるに拘らず」に傍点]、彼は一切之れを排除して[#「彼は一切之れを排除して」に傍点]、曾て窘窮したる迹を示さず[#「曾て窘窮したる迹を示さず」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]是れ其戰略巧妙にして進退掛引善く機宜に適するものあるが爲なり[#「是れ其戰略巧妙にして進退掛引善く機宜に適するものあるが爲なり」に傍点]。前きに松隈内閣の成るや、世間皆以爲らく、鑛毒問題或は大に其氣※[#「陷のつくり+炎」、第3水準1−87−64]を收めむと※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば當時進歩黨は内閣
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