に對する攻撃の鋭鋒を他に轉ぜしめむとするの權謀なりと雖も、亦自由黨の黨略としても時機を得たるものと謂ふ可し。
 現内閣は自由黨と休戚を共にすると揚言したるに拘らず、其爲す所は、皆自由黨の初志と背馳したりき※[#白ゴマ、1−3−29]特に文官任用令を正して政黨員任官の門戸を遮斷したるは、自由黨の最も不快とする所なり※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば是れ自由黨をして單に政府に盲從せしめ、無意義の提携を繼續せしむるの目的なればなり※[#白ゴマ、1−3−29]故に政權分配問題は[#「故に政權分配問題は」に白丸傍点]、自由黨の死活問題なり[#「自由黨の死活問題なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]たとひ今日星氏に依て唱へらるる事となしとするも[#「たとひ今日星氏に依て唱へらるる事となしとするも」に白丸傍点]、其早晩自由黨の大問題と爲るに至る可きは自然の數なり[#「其早晩自由黨の大問題と爲るに至る可きは自然の數なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]今や自由黨の現内閣に對する不平漸く長ずるを認むるに於て、星氏の機心敏慧なる、此黨情を利用して局面を一變せむとす※[#白ゴマ、1−3−29]其智計土佐派を出づること一等なりと謂ふ可し。

      (九)自由黨の實際的首領
 星亨氏は眞に自由黨の實際的首領なり※[#白ゴマ、1−3−29]彼は政治上の公徳を解するの君子人に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]されど其百折撓まざるの堅志と、其手段の善惡を選まずして邁往するの勇氣とは、自由黨を指導するの首領として最も適當なる人物なり※[#白ゴマ、1−3−29]世間或は彼れを以て浮浪の親方と爲すものあれども[#「世間或は彼れを以て浮浪の親方と爲すものあれども」に傍点]、自由黨の首領たるものは[#「自由黨の首領たるものは」に傍点]、寧ろ親方たる資質あるものに竢つ所あり[#「寧ろ親方たる資質あるものに竢つ所あり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]收賄と言ふ勿れ[#「收賄と言ふ勿れ」に傍点]、議員買收と言ふ勿れ[#「議員買收と言ふ勿れ」に傍点]、今の自由黨を指導するの動力は[#「今の自由黨を指導するの動力は」に傍点]、内治問題に非ず[#「内治問題に非ず」に傍点]、外交政策に非ずして[#「外交政策に非ずして」に傍点]、唯だ胃腑の問題のみ[#「唯だ胃腑の問題のみ」に傍点]、財嚢問題のみ[#「財嚢問題のみ」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れ星氏の如きは即ち此問題の解釋者として一種の伎倆を有する英雄なり[#「彼れ星氏の如きは即ち此問題の解釋者として一種の伎倆を有する英雄なり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れなくむば自由黨は殆ど亡びむ[#「彼れなくむば自由黨は殆ど亡びむ」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは自由黨の純代表者にして[#「彼れは自由黨の純代表者にして」に傍点]、又其司命者なり[#「又其司命者なり」に傍点]、自由黨は果して彼れに背き得可き乎[#「自由黨は果して彼れに背き得可き乎」に傍点]。(三十二年十一月)

   田中正造

     田中正造氏

      下院の名物
 年々開會する帝國議會の下院に於て[#「年々開會する帝國議會の下院に於て」に傍点]、常に奇異なる風采言動を以て[#「常に奇異なる風采言動を以て」に傍点]、無限の興味を傍聽者に與ふる一人物あり[#「無限の興味を傍聽者に與ふる一人物あり」に傍点]。其山猫の人化したる的の面既に甚だ愛嬌津々たるのみならず[#「其山猫の人化したる的の面既に甚だ愛嬌津々たるのみならず」に傍点]、其選擧區民より贈與せられたりといへる五所紋付黒木綿の羽織を着用して[#「其選擧區民より贈與せられたりといへる五所紋付黒木綿の羽織を着用して」に傍点]、古武士の純朴を存する所亦頗る異彩あり[#「古武士の純朴を存する所亦頗る異彩あり」に傍点]、彼は誰れぞ[#「彼は誰れぞ」に傍点]、下院第一等の名物田中正造氏其人なり[#「下院第一等の名物田中正造氏其人なり」に傍点]。
 彼は多くの場合に於て極めて沈默なりと雖も、是れ唯だ眠れる獅子の沈默のみ[#「是れ唯だ眠れる獅子の沈默のみ」に白丸傍点]、其勃然として一たび自席を起つや口を開けば惡罵百出[#「其勃然として一たび自席を起つや口を開けば惡罵百出」に白丸傍点]、瞋目戟手と相應じて[#「瞋目戟手と相應じて」に白丸傍点]、猛氣殆ど當る可からず[#「猛氣殆ど當る可からず」に白丸傍点]、曾て原敬氏を罵つて國賊と爲すや、叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]咆哮、奮躍趺宕、恰も狂するものゝ如く、人をして全身の血管悉く破裂せざるかを疑はしめたりき※[#白ゴマ、1−3−29]當時某代議士は彼れが感情の滿潮に達するを觀て其或は氣絶せんことを恐れ[#「當時某代議士
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