−3−29]侯の藩閥を好まざるは[#「侯の藩閥を好まざるは」に二重丸傍点]、猶ほ大隈板垣兩伯の藩閥を好まざるが如し[#「猶ほ大隈板垣兩伯の藩閥を好まざるが如し」に二重丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]唯だ兩伯は藩閥を好まざると共に[#「唯だ兩伯は藩閥を好まざると共に」に二重丸傍点]、餘りに政黨を好み[#「餘りに政黨を好み」に二重丸傍点]、侯は政黨にも亦甚だ冷淡なるを異とするのみ[#「侯は政黨にも亦甚だ冷淡なるを異とするのみ」に二重丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]顧ふに、侯が三十年間に於ける政治的傳記は、侯が如何なる塲合にも善く自家の據る可き勢力を發見して、善く之れを利用したるの事實を説明すと雖も、此れと共に其思想の藩閥と相容れずして[#「此れと共に其思想の藩閥と相容れずして」に白丸傍点]、動もすれば之れが爲めに苦められたるの事實も[#「動もすれば之れが爲めに苦められたるの事實も」に白丸傍点]、亦其傳記中に認識するを得可し[#「亦其傳記中に認識するを得可し」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]故に侯は外に對して藩閥を利用しつゝある間に[#「故に侯は外に對して藩閥を利用しつゝある間に」に白丸傍点]、内に在ては絶えず其勢力を控制するの術數を施したるは[#「内に在ては絶えず其勢力を控制するの術數を施したるは」に白丸傍点]、亦歴々として認む可きものあり[#「亦歴々として認む可きものあり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]試みに其一二を言はむか。
 侯は明治十四年、大隈伯と相約して、十六年を以て國會開設の議を奏請せむとしたりき※[#白ゴマ、1−3−29]是れ國會に依りて藩閥を控制するの意より出でたるに非りし歟[#「是れ國會に依りて藩閥を控制するの意より出でたるに非りし歟」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]其計畫未だ成らざるに破れて、藩閥の爲めに謀叛を以て擬せらるゝに及び、侯は飜然として其計畫を中止し、獨り大隈伯をして之れが犧牲と爲らしめたるは他なし、是れ唯だ成敗の勢を悟りて[#「是れ唯だ成敗の勢を悟りて」に傍点]、急遽の改革を不利と認めたるに由るのみ[#「急遽の改革を不利と認めたるに由るのみ」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]藩閥を維持するの必要を信じたるが爲に非ず[#「藩閥を維持するの必要を信じたるが爲に非ず」に傍点]。尋で明治十八年官制を改革して、文治組織と爲し、官吏登庸法を制定して、選叙を嚴にしたる如き皆主として藩閥を控制するの意より出でずむんばあらじ[#「皆主として藩閥を控制するの意より出でずむんばあらじ」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]世間或は侯が總理大臣を以て宮内大臣を兼攝したる當時の位地を評して曰く、是れ侯が信用を宮中に固めて、自家の權勢を保全するの秘策なりと※[#白ゴマ、1−3−29]夫れ然り然りと雖も[#「夫れ然り然りと雖も」に白丸傍点]、此秘策は國民に對して壓制政治を行ふの準備に非ずして[#「此秘策は國民に對して壓制政治を行ふの準備に非ずして」に白丸傍点]、亦實に藩閥を控制するの意に外ならざるが如し[#「亦實に藩閥を控制するの意に外ならざるが如し」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]之れを要するに侯の施設は[#「之れを要するに侯の施設は」に傍点]、大抵藩閥と利害を異にするものたるに於て[#「大抵藩閥と利害を異にするものたるに於て」に傍点]、藩閥者流は漸く侯に慊焉たらざるを得ざるに至り[#「藩閥者流は漸く侯に慊焉たらざるを得ざるに至り」に傍点]、其結果として所謂る武斷派なるもの起り[#「其結果として所謂る武斷派なるもの起り」に傍点]、而して山縣内閣と爲り[#「而して山縣内閣と爲り」に傍点]、而して松方内閣と爲り[#「而して松方内閣と爲り」に傍点]、終に選擧干渉に失敗して[#「終に選擧干渉に失敗して」に傍点]、藩閥大に頓挫したると共に[#「藩閥大に頓挫したると共に」に傍点]、伊藤侯復た出でて内閣を組織したるは第四議會將に召集せむとするの時なりき[#「伊藤侯復た出でて内閣を組織したるは第四議會將に召集せむとするの時なりき」に傍点]。
 第二伊藤内閣組織せらるゝや、侯は竊かに故陸奧伯の手を通じて自由黨と提携するの端を啓き、日清戰爭の後に至て終に公然提携の實を擧げ、板垣伯に内務大臣の椅子を與へて、一種の聯立内閣を形成したりき※[#白ゴマ、1−3−29]是れ一は議院操縱の必要より來れるものなる可きも、其主要の目的は[#「其主要の目的は」に白丸傍点]、實に藩閥を控制せむとするに在りしや疑ふ可からず[#「實に藩閥を控制せむとするに在りしや疑ふ可からず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]此を以て最も伊藤内閣に反感を抱きしものは[#「此を以て最も伊藤内閣に反感を抱きしものは」に二重丸傍点]、藩閥武
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