に接せざる者なし。伯は此等の外人を待遇するに於て亦能く親切鄭寧を盡くすがゆゑに、伯と會見して不快の感を殘すものは一人もあらずといへり。而も伯は此の場合に於て[#「而も伯は此の場合に於て」に白丸傍点]、最も善良にして最も進歩したる日本人民の思想を紹介するがゆゑに[#「最も善良にして最も進歩したる日本人民の思想を紹介するがゆゑに」に白丸傍点]、其の外交上に寄與するの利益は甚だ偉大ならむ[#「其の外交上に寄與するの利益は甚だ偉大ならむ」に白丸傍点]。伯は實に無冠の外務大臣[#「無冠の外務大臣」に丸傍点]として外人と應接するものにあらずや。
日露戰爭起るや、外國の新聞記者は、軍事通信の任務を帶びて續々我國に來朝せり。彼等の中には始めて日本を觀たるもの少なからざれば、往々日本を誤解して日本に不利益なる報告を本國に送るものなしとも限らず。是れ决して輕視すべきものに非ざるを以て、大隈伯は屡々彼等を早稻田に招きて日本の眞相を説明するに勉めたり。曩に開國五十年紀念會を開くや、伯は亦奮つて周旋の勞を執り、居留米人をして頗る滿足せしめたりき。當日會場整理の任に當りし米人ドクトル某氏が、我米人は最も大隈伯を愛好せりといひしを見るも、伯が如何に外人間に信用あるかを想ふ可し。
英國史傳家エワルド曾て其の著『代表的政治家』に於てパルマルストンを評して曰く、彼れは最高の能力に依りて英國を支配せざりき[#「彼れは最高の能力に依りて英國を支配せざりき」に傍点]。然れども彼れは忠實にして不撓不屈なる愛國者なりき[#「然れども彼れは忠實にして不撓不屈なる愛國者なりき」に傍点]。彼れは正直にして善良なる信條を有したりき[#「彼れは正直にして善良なる信條を有したりき」に傍点]。彼れの智識は精確にして多種なりき[#「彼れの智識は精確にして多種なりき」に傍点]。彼れの國民に對する同情は眞摯にして决して僞りならざりき[#「彼れの國民に對する同情は眞摯にして决して僞りならざりき」に傍点]。彼れの趣味及び性格は[#「彼れの趣味及び性格は」に傍点]、全然當時の英國人民を代表したりき[#「全然當時の英國人民を代表したりき」に傍点]。彼れの生涯は必らずしも偉大なりといふ可からず[#「彼れの生涯は必らずしも偉大なりといふ可からず」に傍点]、然れども我政治家中にては最も英國的なりきと[#「然れども我政治家中にては最も英國的なりきと」に傍点]。余は此の語を移して以て我大隈伯を評するの甚だ適當なるを思はずむばあらず[#「余は此の語を移して以て我大隈伯を評するの甚だ適當なるを思はずむばあらず」に傍点]。(三十七年六月)
進歩黨の首領
進歩黨の中には、總理大隈伯の退隱を希望するもの少からずと傳へらる。其の意蓋し進歩黨不振の原因を以て伯の指導宜しきを得ざるに歸し[#「其の意蓋し進歩黨不振の原因を以て伯の指導宜しきを得ざるに歸し」に傍点]、伯の退隱に依りて進歩黨の門戸を開放し[#「伯の退隱に依りて進歩黨の門戸を開放し」に傍点]、廣く人才を招徠し[#「廣く人才を招徠し」に傍点]、新たに適當の首領を求め[#「新たに適當の首領を求め」に傍点]、以て黨勢を擴張すると共に[#「以て黨勢を擴張すると共に」に傍点]、又政權に接近せむと欲するに在るものゝ如し[#「又政權に接近せむと欲するに在るものゝ如し」に傍点]。近時新聞紙上の一問題となりたる進歩黨の改革運動なるものは、此の希望を有する黨員を中心として起りたるに外ならじ。彼等は政友會と提携して却つて其の賣る所となれる幹部の無策に憤慨し、堂々たる一大政黨を以てして其の言動の毫も議會に重きを置かれざるの現状に煩悶し、進では政權に接近するの機會に益々遠ざかり、退ては政界に孤立して漸く民心に厭かれむとするの非運に苦惱し、而して斯くの如き苦惱煩悶憤慨より生ずる自然の反動は[#「而して斯くの如き苦惱煩悶憤慨より生ずる自然の反動は」に白三角傍点]、終に彼等を驅て馬鹿らしき謀叛を企てしむるに至れり[#「終に彼等を驅て馬鹿らしき謀叛を企てしむるに至れり」に白三角傍点]。大隈伯の退隱を希望すといふ如きは[#「大隈伯の退隱を希望すといふ如きは」に白三角傍点]、馬鹿らしき隱謀に非ずして何ぞや[#「馬鹿らしき隱謀に非ずして何ぞや」に白三角傍点]。
大隈伯の進歩黨に總理たるは[#「大隈伯の進歩黨に總理たるは」に白丸傍点]、則ち正當の人物に於ける正當の位地なり[#「則ち正當の人物に於ける正當の位地なり」に白丸傍点]。伯の健康にして猶ほ黨務に堪ゆる限りは[#「伯の健康にして猶ほ黨務に堪ゆる限りは」に白丸傍点]、進歩黨は伯を總理とするに依りて其の存在を保つを得可く[#「進歩黨は伯を總理とするに依りて其の存在を保つを得可く」に白丸傍点]、又其の存在をして生命あり光輝あらしむるを得
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