で、聴《き》くのをやめて外へ遊びに出て了うのでした。
また別の日には、父の何年ぶりかの所蔵品《もちもの》の虫干もありました。此の日には私は離れの方へ見に行きました。
刀《かたな》だの、軸ものだの、文庫にはいっている古い書類だの、そのほか色々な器物《うつわ》が、古道具屋の店みたいに並べてありました。
上に円い枠《わく》のついた三本脚の黒塗の台に、硝子鉢が篏めてありましたが、父はそれを『ギヤマンの金魚鉢』と呼んでいました。
私は刀に少し触《さわ》ってみたり、文庫の中をのぞいて見たりするのですが、その中には祖父の句集や、道中記などの半紙綴りのものなどもありました。
父が此の上もなく大切にしている堆朱《ついしゅ》の棗《なつめ》というのを覗かしてもらいましたら、それは私のおはじきを納れるによい容器《いれもの》のように思われました。
なおも私があちこち見廻していましたら、『絵ならおもしろい錦絵がそこにある。それをご覧』と、父は片隅を指してくれました。
糊《のり》でつながれて部厚く巻込まれた錦絵を私が手に取り上げましたら、父が片方を徐かにほぐして行きながら、縁の端まで行って立ち止まって
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