壊れたり擦《す》り減《へ》ったりすることがない。そこに目をつけて分銅《ふんどう》代りに用いる。十銭白銅貨の重量はザッと一|匁《もんめ》である。これは記憶するのにまことに便利だ。随って、杉箸の中央に糸をつけてこれを指でもち、そのところより両方へ等距離の箇所を選び、糸を下げる。一つにはこの十銭白銅貨四個を釣り、他の糸にはアルミ製の物干挟《ものほしばさ》みのようなものをつけ、これに封書をくわえさせる。どっちが上《あが》るか下《さが》るかによって、郵税として三銭切手を貼るべきか、もう一枚殖やして六銭だけ貼るべきかがわかるという簡易秤《かんいばかり》の役目をつとめる。

 射的としての効用
 好ましきは射撃手としての腕前達人たることである。吾人《ごじん》に許されたるは、ピストルに非ず、機関銃に非ず、猟銃も制限いたずらに厳《げん》にして駄目、空気銃だけが許されている。空気銃とて、照準を合わせる練習は立派にやれるし、プスリと射抜《いぬ》いた刹那《せつな》の快感も相当なものである。ところでその射的であるが最も面白く、且つ有益なるは、庭の樹の枝に糸を下げ、その先に十銭白銅貨をブラ下げて置いてこれを射つこ
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