白銅貨の効用
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)政府が鋳造《ちゅうぞう》せる白銅貨《はくどうか》の効用
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)ザッと一|匁《もんめ》である。
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シノプシス
政府が鋳造《ちゅうぞう》せる白銅貨《はくどうか》の効用について徹底的に論じた一文である。これを以て白銅貨の文化的価値を明かにしたものという可《べ》く、随《したが》って考現学の資料ともなるものである。
序論
ここに十銭の白銅貨がある。この効用は如何? と尋《たず》ぬれば、
「十銭の品物を買うことができる。」
或いは
「十銭の持つ財的エネルギーとして、他のエネルギーに変換出来る。」
などというであろうが、それは忠実なる造幣局のお役人と同じ考えに等しく、全くもって十銭白銅貨の極《ご》く一部の効用を指したものに過ぎない。十銭白銅貨なんて、そんなツマンナイ物品ではないのである。
以下その効用について論旨を拡げたい。
分銅としての効用
十銭白銅貨は物体であるが故に重量をもつ。そして硬い物質で出来あがっているから、相当乱暴に取扱っても
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