はない。また改めてもう一度第一會場からくりかへしてみられると、また新なる感興を覺えられるであらう。虫喰ひ算は、一度や三度[#「三度」はママ]解いたから、そのあとはもう興味索然とするやうな、そんな薄つぺら[#「薄つぺら」は底本では「薄つらぺ」]なものではない。かうして二度三度四度とやりかへすために、本書にインキで書き込むことは控へて、なるべく軟い鉛筆で記入されたいものである。
では會場を開きますぞ。さあさあ世界にめづらしい「“虫喰ひ算”大會」の會場は、こちらが出發點でございます。自信と興味のある方は、どんどんこの門から御入場なされませい。どうぞ、お先へ、お先へ……。
[#改ページ]
“虫喰ひ算”大會 第一會場
さあ、こちらが第一會場です。“虫喰ひ算”大會の出發點です。加へ算、引き算、掛け算、割り算と全部揃つてゐます。
(4)は、五つの穴から成立つてゐる數を、11[#「11」は縦中横]で割つた答が、穴の下に出てゐますが、殘りがあることに御注意のこと。(5)はこの會場で一番むつかしいものですが、よく見てゐれば、どこから解いたらいいか分ります。(分らない方に、智惠をちよつと貸しませうか。8に如何なる數をかけたら、一位に4の數が出るか、出てゐる桁は三桁ですから……そこまでいつては興味がなくなりますね、ごめんなさい)
(1)
□937
8□
109
+ 4□75
――――――
74□5
(2)
8□74□
− 6□23
――――――
□11□6
(3)
□□□□1□
× 7
――――――――
□999998
(4)
11)□□□□□
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
7996
殘り9
(5)
□□
_______
28)1□□4
□□
―――――――
□□4
□□4
―――――――
0
“虫喰ひ算”大會 第二會場
第一階選士となられた貴下の御來場を歡迎します。どうぞ本會場も見事にパスして、第二階選士の名譽を獲得せられんことを希望いたします。
本會場にも五問題が配置されてあります。
(1)はやさしい。(2)ではちよつと頭をおひねりになるでせう。(3)もへいちやら。(4)は、ちよつとむつかしさうに見えて、案外やさしいです。右の方の或數字と或數字に注意力を向ければねえ。(5)は面白い問題です。三つのCと、それからBによく御注意を……いや、いはない方がよかつたかなあ。
(1)
526
− □7□
――――――
347
(2)
AB2DEF
× 2
――――――――
2DEFAB
(3)
9)□□□□□
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4140
殘り8
(4)
823
× 1□
――――――
□□□5
823
――――――
□□□□5
(5)
DC
______
ABC)DEDC
DAB
――――――
CDC
CDC
――――――
0
“虫喰ひ算”大會 第三會場
こちらが第三會場です。今までとちがつて少しむつかしくなりますよ。
(1)の穴は8以内の數字をあてはめてください。(2)は樂ですね。(3)は、いささか骨つぽいですぞ。AとCを掛けて三十いくつになるためには、AとCはどんな數でなければならぬか。7と3は既に決まつてゐるからこれは除外です。また0でもあり得ない。3以下の小さい數字でもあり得ない。だんだん範圍が制限されてきますね。それにもう一つ考へ合はせます。最後のところで、3にAを掛けると、一位はCとなる。さういふ特定の數はたくさんありませんね。……ここらでお分りになるでせう。(4)は大したことありません。(5)は面白いです。
(1)
2344
□□□□
+ 5720
――――――――
13252
□ 8以内の數字のこと
(2)
□7□6□
× 7
―――――――――
3□29□6
(3)
A)3B7AC
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
CB73
(4)
AB□A
× AB
――――――
□□□□
□□□9
――――――
□□□B□
(5)
1□2
______
□□)□□□64
□□
―――――
246
□□1
―――――
□□4
□□4
―――――
0
[#第一段目「1□2」は底本では「1□4」]
[#第二段目の被除數「□□□64」は底本では「□□64」]
[#第四段目「246」は底本では「226」]
“虫喰ひ算”大會 第四會場
前會場で第三階選士を獲得なされて、おめでたうございました。しかし、前會場は、ちよつとこたへたやうでございますね。
本會場は、その埋合はせに、比較的やさしく且つ面白いものを並べてあります。(5)に於いては、答のところにAが二つありまして、そこに……。
喋りすぎるぞ、といふお叱りです。はいはい、では沈默いたします。
(1)
674□
2□7
63
+ 2□□8
―――――――
□□1□3
(2)
7)□□□□□
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
6618
殘り1
(3)
CB8A6
× A
―――――――――
21CB8A
(4)
2N8
2N2
88N
+ N2N
―――――――
2164
(5)
A7A
______
□□)1□□□□
1□□
―――――
□□
□□
―――――
□□□
□□□
―――――
0
“虫喰ひ算”大會 第五會場
いらつしやい、ここが第五會場です。
いかがですか。大分面白くなりましたね。本會場も五問題を用意してございます。
(1)、(2)、(3)は、居睡りしてゐてもお出來になりませう。
(4)は? “この計算は間違ひぢやないかなあ、三桁の數をかけてあるのに、計算は二桁しか出てをらんぞ”と、誰方か喚いてゐますが、やれやれお氣の毒。
(5)は三段目の4[#「4」は底本では「5」]にお目をとめられて[#「お目をとめられて」は底本では「お目とめられて」]……。いや、餘計な口出し[#「餘計な口出し」は底本では「餘計なこと口出し」]でしたかね。
(1)
□□7□4□
× 7
―――――――――
1□2□8□1
(2)
□84562
− 8□1□3
―――――――――
6□7□7□
(3)
□2□
_____
8)3□24
(4)
WTFR
× STX
――――――――――
XRSY
SWQY
――――――――――
SYRQSY
(5)
A□1
_______
1A)□56□□
□4□
―――――――
□□□
□□□
―――――――
1□
1□
――――
0
[#第二段目の被除數「□56□□」は底本では「□66□□」]
[#第三段目「□4□」は底本では「□5□」]
“虫喰ひ算”大會 第六會場
既に第五階選士となられしことなれば、その實力に敬意を表し、本會場以後に於いては、それとなくヒントを袖の下からちらりと見せるやうなことはよしませう。
ささ、どうぞお進み下さい。
(1)
□□57□
× 9
―――――――――
3□1□02
(2)
5483□
− □□2□□
――――――――
9639
(3)
6)□□□□□
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
9) □□□□ 殘り1
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
470 殘り1
(4)
3□□□
× 9□
―――――――――
2□□□1
30□17
―――――――――
33□□□1
(5)
7F
______
ADC)BAEFC
BDG8
――――――
DEEC
1EEC
――――――
0
“虫喰ひ算”大會 第七會場
はい、こちらが第七會場です。
だんだん面白い問題が出て來ます。
(1)も(2)も(3)も、あまり面白くない――とおつしやいますか。やさしすぎて面白くないのですか。さうでせう、もう貴下は第六階選士なんですからねえ。しかし何事にも、ウォーミング アップといふことが必要でございますと存じます。
(4)と(5)は、たいへん面白い。おほめにあづかつて恐れ入ります。
(1)
2157
□□□□
+ 1625
―――――――
10342
□は8以内の數字のこと
(2)
□□□
× □7
―――――――
3□□4
5□□□
―――――――
□□□□□
(3)
A7
____
3)1A1
(4)
ABCD
× DCB
――――――――
BDKG
CHEB
DFCK
――――――――
LCCEGG
(5)
□74
______
31□)□□6□□
63□
――――――
□□8□
□□□□
――――――
□□□□
□□□□
――――――
□18
“虫喰ひ算”大會 第八會場
第八會場はこちらでございます。例によつて問題は五つ並べてございます。どうぞお氣のままにお進み下さい。
え? 前のやうに喋つてくれとおつしやるのですか。それは困りましたね。本會場の問題はそんなにむつかしかありませんよ。
(4)ですか。これはわけありません。六段目でBが何者かと分れば、除數の十位も分つてあとは……あとは、むにやむにや。
(5)ですか、貴下が本當に助け舟をお求めなさるのは。割る數も商も皆穴で、手がかりがないとおつしやいますか。なあに、これもやさしいですよ。五段目の數字は何と何とを掛けると出るべき數か、因數の知識をちよいと……叱られぬ先に默りませう。
(1)
3456□8
□324□
+ □6□123
―――――――――
959045
(2)
4□□□4
− □947□
――――――――
26205
[#「−」は底本では「+」]
(3)
7□4□
× 53
――――――――
23□□7
38□□□
――――――――
410□□7
(4)
STP
_____
BT)KDNG
PK
―――――
FN
TN
――――
BGG
NB
――――
N
[#第七段目「NB」は底本では「NG」]
(5)
□□□
______
□□□)□□□□□
□□□
――――――
□□□□
1851
――――――
□□□□
□5□□
――――――
0
“虫喰ひ算”大會 第九會場
やつぱり叱られてしまひました。餘計なお喋りをして、興味を削いだといふので……。それなれば、私のお喋りに對して耳に蓋をして下さればそれで目的は達せられる筈ですが……いや、ぐちは申しますまい。
いよ
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