2と二箇のNである點だ。しかもこの合計を下列でみると、一位では4だし、十位では6となつてゐる。これだ、鍵は。
 これは一體どういふことを意味するか。一位から十位へあがつた數字は、6から4を引いた2であることを意味する。
 どうして2をあげることができるか。8と2を加へて10[#「10」は縦中横]だから、これでまづ1があがる。その外に二つのNがあるから、この和で1があがらねばならぬ。すると二つのNの和は14[#「14」は縦中横]である。よつてNは7だといふことになる。
 うそだと思つたら五箇のNに7を代入して檢算してみるがよろしい。かういふやり方では、百位のNにはつひに手をつけないで解くことができた。一刀兩斷の快味に、ちよつと似てゐる。

 引き算を一つやつてみよう。やさしいものであるが……。

【例題三】これは國民學校の一年生でもできるであらう。一位からやつて行く。

 □84562
− 8□1□3
―――――――
 6□7□7□

 2から3は引けないから、十位から10[#「10」は縦中横]を借りて、12[#「12」は縦中横]から3を引いて9が出る。
 次は十の位だ。6は既に5に減つてゐる。それから□を引いて7が出るといふからには、この□は逆算して8でなければならぬ。この際、百位から10[#「10」は縦中横]を借りた。
 次は百位だが、被減數の5は、先に1を右へ貸したから4となつてゐる。だからそれから1を引くと3であるから、□は3と決まつた。
 次は千位。これはわけなしだ。□は7であらねばならぬ。但し上から10[#「10」は縦中横]を借りた。
 萬の位では、被減數の8は下へ1を貸したので、實は7である。それから8を引けば9である。□は9と決まる。
 十萬の位の□は7である。なぜなら下へ1を貸してあつて、答は6となつてゐるから、7にちがひない。これで出來た。下のやうになる。

 784562
− 87183
―――――――
 697379

 次は掛け算の場合である。掛け算だからといつて別にやり方が根本的にちがふわけではないが、一つの方針をごらんにいれておきたいと思ふ。
【例題四】この問題を見ると、虫喰ひ穴が八箇所もある。こんなに穴だらけで、果して推理の力で解けるだらうかと不安になる。

  97□
×  □8
―――――
 □□□0
 9□□
―――――
175□0

 しかししばらくこの計算をながめてゐると、そのうちに有力なる手懸りが發見されるのだ。そこが興味津々たるところだ。
 すなはち、まづ第一の手懸りは、乘數の十位の穴は、1であるといふことだ。なぜなれば、上から四段目を見ると、三桁の數であり、その百位は9に始まつてゐる。しかるに被乘數を見ると、やはり三桁であり、百位の數字は9である。すると乘數の十位は1であらねばならぬことが分る。さうなると上から第一段目と第四段目とは同じ數である。そこで上のやうに穴を二つふさぐことができた。

  97□
×  18
―――――
 □□□0
 97□
―――――
175□0

 第二の手懸りは、乘數の一位の8を、被乘數の一位の□に掛けると、その答の一位は、8の字の下にあるとほり0となるのだ。さういふ場合、□はどんな數字でもいいといふわけには行かぬ。すなはち□は0か5かのどつちかであらねばならぬ。さうでないと第三段目の右端の數字は0とならない。
 では、0か5か、どつちであるか。それを判定する段取に移る。
 □は0ではない。なぜなら、第三段目は 7760 となり、第四段目は 970 でそれを加へると、第五段目のやうに 175 云々とはならず、174 云々[#「174 云々」は底本では「173 云々」]となつて勘定が足りない。そこで被乘數の一位の□は、5であらねばならぬと決定する。
 □を5として計算してみると、正しく下の如く、ちやんと勘定が合ふのである。

  975
×  18
―――――
 7800
 975
―――――
17550

 次は、割り算である。割り算は虫喰ひ算としての面白さを十分に備へてゐる。すぐれた虫喰ひ算は、たいてい割り算の形をとつてゐる。次にあげたのは、やさしい割り算の虫喰ひ算である。

【例題五】[#「【例題五】」は定本では「【例題六】」]この問題では、二桁の除數が穴になつてゐるし、答も十位が穴だし、計算の中にも六箇所の穴があいてゐる。

    □3
  ____
□□)949
   □□
  ――――
   □□9
   □□9
  ――――
     0

 なほよく見るのに、肝腎の除數が全然不明であり、またその答も半分しか判明してをらず、これではどうにも手のつけやうがない――やうに思はれる。
 が、しばらく氣を落着けて、じつとこの運算書を眺めてゐると、
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