ろの穴を探し出すことにある。
「覆面算」では、同樣のこともあるけれど、同じ文字又は符號がいろいろな關係で並んでゐるところからして、ははあ、この文字はこつちの文字の二倍だなどといふ相互關係が見出されると、後は急に解けやすくなる。
 虫喰ひ算の類を解くときは、徹頭徹尾推理の力で推していくところに興味と實益があるのであつて、一かなあ、それとも二かなあ、それでなければ三かといふふうに、いちいち代入法でやつて行くやり方は面白くない。
 虫喰ひ算は、序文にも述べてあるとほり、中級以上のものは一題一題が寶石のやうに尊く且つ愛づべきものであるからして、なるべくじつくりと解いていただきたい。一日に十題も二十題も解くことは、頭も疲れるし、それに虫喰ひ算の妙味が分らないと思ふ。
 そこで本書の“虫喰ひ算”大會の設計に當つても、やさしいものとむつかしいものとを交ぜて四題ぐらゐを一會場とすることとした。
 なほ、第一會場から第三十會場までのうち、初めの三分の一ぐらゐは割合とやさしいが、それから先はだんだんと複雜難解なるものが入つて來、それだけに推理に成功すれば嬉しさがこみあげる。第二十會場以後となると、虫喰ひ算の愛好者にとつては、こたへられないほどの歡喜と興奮とをもたらすことであらうと思ふ。


    二 やさしい虫喰ひ算とその解き方

 まづやさしい虫喰ひ算の方から、その解き方を述べて行く。
【例題一】このやうな加へ算がある。四角の穴は、いはゆる虫の喰つたところである。さういふものが、この問題には四つある。これを推理で探しあてるのだ。

  1□92
  29□1
  971□
+ 2□17
――――――
 17592

 まづ右端の縱列の□から考へて行く。これは一の位である。2と1と□と7とを加へた結果、その値の一位は2となることが、この計算によつて分つてゐる。□は別として、分つてゐる2と1と7とを加へると10[#「10」は縦中横]となる。しかるに、一の位の合計の一位の數字は0ではなくて2である。するとこれは□が0ではなく、2であることが推理される。そこでその2を書き入れ、上のやうになる。

  1□92
  29□1
  9712
+ 2□17
――――――
 17592

次は十の位だ。一位から1が送られてゐることを忘れてはならぬ。やはり□が一つある。それを別にして、分つてゐる數字9と1と1と、一位からくりあがつた1とを加へると、その結果は12[#「12」は縦中横]となる。しかるに、十位の合計の十の位は9となつてゐて、2ではない。これはつまり十位の□を加へてないからかうなるわけだから、9から2を引いて7、この7が□の數字と決まる。そこで計算を整理すると次のやうになる。

  1□92
  2971
  9712
+ 2□17
――――――
 17592

 その次は百位だ。これは今までのやうには行かない。□が二つもあるからだ。分つてゐる9と7とを加へ、それに十位から上がつてきた1を加へて17[#「17」は縦中横]となる。この縱列の合計の百位の數字は5であるから、□と□との合計は8であるかもしれず、18[#「18」は縦中横]であるかもしれない。さあ分からなくなつた。
 が困ることはない。もう一つ上の千位の數字を見ると、この縱列には□がない。1と2と9と2を加へて14[#「14」は縦中横]となるが、下の合計では17[#「17」は縦中横]となつてゐる。すると百位から千位へ送られた數字は17[#「17」は縦中横]から14[#「14」は縦中横]を引いた3だと分かる。
 さうなると百位の二つの□の和は8ではなくて18[#「18」は縦中横]であらねばならぬ。18[#「18」は縦中横]でないと、3は上つてこない。
 これで一應解けたわけだ。□と□の合計が18[#「18」は縦中横]となる關係があれば、どんな數字でもいいのだ。いや、どんな數字といふわけにもいかない。二數字の和で18[#「18」は縦中横]なら、いづれも9である外にない。なぜなら9以上の數字はこの縱列に存在しないわけで、ぜひとも9でなければならないのだ。そこで答は上の如く決まつた。

  1992
  2971
  9712
+ 2917
――――――
 17592

 同じ加へ算でも、「覆面算」ふうなものが加はつた場合がある。次の例題がそれだ。

【例題二】Nといふ文字で現された數字が五箇所に入つてゐる加へ算である。もちろん、どのNも同じ數字である。

  2N8
  2N2
  88N
+ N2N
―――――
 2164

 この配列を見ると、どこから手をつけていいか分らぬやうであるが、しばらく見てゐると鍵が發見される。それは一位の四數字の和が8と2と二箇のNであり、また十位の四數字も同じく8と
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