うまい手懸りがだんだんと見つかつてくるのである。まづ第一に除數の一位の穴が3であることに氣がつく。そのわけはかうだ。除數[#「除數」は底本では「被除數」]に答の一位の數である3をかけたとき、その合計の一位の數は9となつてゐる。(上から五段目の右端)つまり、3に或數(除數の一位)をかけて、答の一位に9が出てくるためには、その或數は3の外にないのだ。33が9であるからだ。そこで上のやうに、穴を一つうめることができた。
□3
____
□3)949
□□
――――
□□9
□□9
――――
0
さて次に、答の十位の數は、3よりも少い2か1かのどつちかであることに氣がつく。なぜなれば、除數と答の一位をかけた計算は、上から五段目であつて、三桁の數□□9 だ。ところが、上から三段目の、答の十位をかけた計算は□□となつてゐて二桁の數である。すなはち、答の十位の數は2か1かのどつちかに制限される。これで餘程探求の範圍は狹くなつた。
一方、除數の十位の□は、4か、4よりも大きい數でなければならぬことに氣がつく。なぜなれば、上から五段目のところで、除數の□3 に、答の一位の3をかけると、一位は9となる。次に除數の十位に答の一位の3をかけたものは、百位と十位との二桁ものとなるが、これは除數の十位の數が3以下では二桁とならない(つまり33が9や23が6では二桁とならない。どうしても34の12[#「12」は縦中横]以上でなければならぬ)。そこで除數の十位の穴は、4か、4よりも大きい數だと分る。
そこで今度はもう一度、答の上位の計算、すなはち上から三段目へ戻る。前に述べたやうに、答の十位は1か2かの何れかである。ところが、これが2であつては、今しがた導き出したところの、「除數の十位の數は4以上」といふ關係がぶちこはされる。假りにそれが最低數の4とすれば、答の十位の2をかけると 43×2=86 となるから、被除數の 94 からこれを引くと、殘りは8となつて一桁となる。すなはち上から第四段目は□□9 とはならずして□9 の形となり、桁があはぬ。從って答の十位は1か2かといふことであつたが、これは1であらねばならぬと確定する。さあこれで、大體解けた。今まで解けたところを穴に入れて書いてみると下のとほりになる。
13
____
□3)949
□3
――――
□19
□19
――――
0
これでみるとほり、答の十位が1と決まれば、第三段目の右端は當然3である。するとこの下は、4から3を引くのだから1であり、その1の下も、第六段目が0だから、同じく1であらねばならぬわけである。
第五段目に於いて、十位に1が出る計算で、3の倍數である謎の數字(すなはち除數の十位の數)は何か。順番はこの問題にうつる。これはすぐ分る。それは7である。37の21[#「21」は縦中横]であるからだ。よつて除數の十位の數は、7だと分る。これで重要なところはすべて解けたわけである。念のために、 73×13 で、果してこの計算がうまく合ふかどうかやつてみる。すると下に示すやうに十分滿足することが分る。推理力萬歳! である。
13
____
73)949
73
――――
219
219
――――
0
やさしい問題の解き方はこのぐらゐにして、次はもつとむつかしいものの解き方を二つ三つごらんに入れることにする。
三 高級な虫喰ひ算とその解き方
高級だといつても、解き方の根本に別にかはつたことがあるわけではない。ただむつかしい點は――從つて大いに興味のある點は――どこに手懸りが隱されてゐるか、どこから解き始めたら一番うまく行くかといふところにある。すぐれた寶玉のやうな問題は、このように鍵の隱し場所が極めて意外なところにあり、そしてそれにぶつかつて解くと、あとは全部ががらがらがらと崩れるやうに解けて行くやうなのを指していふのだ。
それを解きにかかる皆さんは、名探偵の明智小五郎か、シャーロック ホームズか、それともファイロバンズかエラリー クヰーンか、とにかくせいぜい智能をふるはれたい。
そこで例題の解説にうつる。
【例題六】[#「【例題六】」は底本では「【例題七】」]これは「覆面算」である。いろいろなアルファベットが並んでゐるが、これはもちろん二十六種の文字が並べてあるわけではなく、皆で十種しかない。つまりCMLQTPAINSの十種である。この十種の覆面者のどれが1234567890のどれであるかを、これから推理でもつて探偵しようといふわけである。
QCN
______
CML)QTPAI
Q
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