オ界』などという小さい城壁《じょうへき》にたてこもることが許されなくなる。一にもラジオ、二にもラジオで、結局、世界はラジオ漬けになるであろうよ。」
「ラジオ漬け――には、今から謝っとくよ。この懐しい世界が、あの化物のように正体の判らないラジオなんぞにつかってしまうと聞いては、生きているのが苦しい。僕はそんなことになる前に、自殺する方が、ましだ。」
「君には気の毒だがネBさん。自殺をしたって、ラジオは自殺者を追い駆ける。なにしろこの世と、死後のあの世とが、ラジオで連絡されるのだからネ。――たとえば此処にC子というトテシャンがあったとする。彼女は或る甚《はなは》だ面目ないことを仕でかし、面目《めんもく》なさにシオらしく、ドボーンと投身自殺を果したとする。やがていよいよ死の国で、わがC子は正気《しょうき》づく。すると憩《いこ》う遑《いとま》もなく、忽《たちま》ち娑婆《しゃば》から各新聞社が自殺原因をラジオで問い合わせて来る。親たちや、友人や、恋人もラジオで訊《たず》ねて来る。受持区域の交番からオマワリさんが調べに来る。冥土《めいど》に於けるC子の姿は無線遠視《テレヴィジョン》に撮られて、直ち
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