行は見す見すこの恐るべき殺人犯人を見遁《みのが》すより外に仕方がなかった。
――それから数分後、一大音響と共に、突如、死の谷から空中に浮び上った巨大なる物体があった。それは大きな飛行船を縦《たて》にしたようなものであった。それは恐ろしい速力で飛び去った。その速力は光の速力に近いもので人間には迚《とて》も出せそうもないものであった。
でこの解決を物理学界の某博士がつけている。
「この怪人こそは、金星に棲息《せいそく》する者である。彼はラジウム・エマナチオンで、斯《か》くの如き怪速力を出して居るものと思う。地球への来訪の意味は不明だが、多分生物学研究にあるらしい。
最後に予は断言する。この怪人達は、地球人類とは全く別箇の系統から発達進化した生物である。換言《かんげん》すれば彼の怪人は、植物の進化したものである。故《ゆえ》に銃丸が入っても別に死せず、唯「緑の汚点《おてん》」として発見せられた緑汁《りょくじゅう》の流出があるばかりである。殺人罪といったような不道徳を怪人が解せなかったのも、抑々《そもそも》植物には情感のないことを考えてみてもよく判ることではないか。……」
植物系統の生物
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