夢がたり
TO, CHEVO NE BYLO
ガルシン Vsevolod Mikhailvich Garshin
神西清訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)禾堆《いなむら》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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 六月のある素晴らしい日のこと――ただし素晴らしいと月並みなお断りをしたのは、列氏で二十八度という温度だったからですが――その素晴らしい六月のある午後のこと、どこもかしこもきびしい暑さでした。なかでもつい四五日まえに刈り入れの済んだ乾草が、禾堆《いなむら》をなして並んでいる庭の草場は、またひとしおの暑さでありました。というのはその場所が、茂りに茂った桜畑で、風上をさえぎられていたからなのです。生きとし生けるものは、たいてい寝入っておりました。人間どもはどっさり御飯をつめ込んで、昼寝の夢をむさぼっていましたし、小鳥も鳴りをひそめていますし、昆虫《こんちゅう》たちもたいていは日ざしを避けて、どこかへもぐり込ん
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