でいたほどでした。家畜のことは申すまでもありません。大きな家畜も小さな家畜も、みんな軒下《のきした》にかくれておりました。犬はどうかと言いますと、穀倉の下に穴を掘って、その中に寝そべって、半ば眼を閉じたまんま、一尺あまりもありそうな桃色の舌を吐きだして、しきりにハアハアいっておりました。ときどき犬は、このうだるような暑気のもよおす物憂さにたえかねてでありましょう、のどの奥からキューンと妙な音が出るほどの、大きなあくびをするのでありました。豚はどうかといいますと、お母さんが総勢すぐって十三匹の子豚を引きつれて、小川の岸へおりて行って、ぶくぶくした黒い泥んこの中にうずくまってしまいましたので、泥の中から見えるものといったら、ブウブウグウグウ鳴っている小さな穴が二つずつあいている豚の鼻づらと、泥んこになった細長い背中と、それにたれ下がっているみっともないほど大きな耳だけでありました。ただ鶏だけは、暑さにもめげずに、台所の登り口の下のからからにかわいた地面を、しきりにあしでほじくりながら、どうにか時間つぶしをしていましたけれど、そこにはもう鶏たちも先刻ご承知のとおり、穀粒ひとつだって残ってはい
前へ
次へ
全13ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
神西 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング