《すべ》ての野蛮人に共通な或る恐怖に似た感情を抱きながら、しかも彼女を、眠り込んだまま彼の××に攀《よ》ぢ登るあらゆる少女並に扱つたのである。彼は機械的に彼女を××××誘つた。ところが劉子は醒《さ》めたままで×××登つた。反対に眠り込む状態に置かれたのは伊曾である。劉子の端麗さはその程度にまで高かつた。
伊曾は劉子を経験した。けれど彼女を犯し得なかつた。彼は劉子にレカミエ夫人と全く同じの不具を発見したのである。
これは何であらう! 容姿の相似が肉体の同じ不具に根ざしてゐようとは。流石《さすが》の伊曾もそんな学説までは知らなかつた。明らかにこれは偶然であつた。この偶然が伊曾を混乱させた。彼は習慣に甘やかされ眠り込んだ意識の状態から急に呼び起された。すべてが急速に転廻し、彼は一時あらゆる自己の見解を奪はれた。これは天罰に近いものだつた。
が、間もなく一つの奇蹟《きせき》が行はれはじめてゐた。不具の故に伊曾は劉子に牽《ひ》かれるのを感じはじめたのである。劉子の場合、その性的不具は一つの完成のやうに見えた。
全く劉子は愕《おどろ》くべき一つの完成であつた。彼女は柔軟や叡智《えいち》や健
前へ
次へ
全39ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
神西 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング