》はありません。千恵もそれぐらゐのことはよく分つてゐます。けれどこの上の探索は千恵の力がゆるしません。そして恐らくこの手紙をお読みになつた母さまは、もう二度とふたたびこんな役目を千恵にお押しつけになる筈はあるまいと、千恵は固く信じてをります。あれは死んだ姉さまなのです。千恵は今こそはつきりさう申します。姉さまはあの業火《ごうか》のなかで亡くなつたのです。どうぞ母さまもさう信じてくださいますやうに!
こんなに度たび姉さまと顔を合せながら、つひに一度も「姉さま!」と呼びかけずにしまつた千恵の薄情さを、母さまはお咎《とが》めになるのですか? 「だから千恵さんは情《じょう》が剛《こわ》いといふのですよ!」と、そんな母さまのお声が耳の底できこえるやうです。そのお咎めなら千恵はいくらでも有難く頂戴《ちょうだい》するつもりです。どうせ千恵は情のこはい、現実のそろばんを弾《はじ》いてばかりゐるやうな女です。そのことは幼い頃から母さまにさんざ言はれましたし、この先もきつと一生涯さうに違ひありません。さうですとも、千恵は生きなければならないのです。生きてゆく以上、死人の世界になんぞかかづらはつてはゐられ
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