恵の耳には、堂内がごうごうと鳴つてゐるやうな凄《すさ》まじい音が、はつきり聞えました。それはまるで火焔《かえん》が堂内いつぱいに渦まいてゐるやうな音でした。くやしいことですけれど、あとはもう夢中でした。いつのまにO町の外科病院へたどり着いたものやら、さつぱり覚えがありません。気がついてみると、何か吐き気のやうなものがしてゐました。たうとう我慢がならず、お手洗ひへ立ちましたが、結局なんにも吐くものはありませんでした。ただの目まひだけだつたらしいのです。……
   ………………………………………
 母上さま、――
 千恵にはもうこれ以上なんの御報告すべきこともございません。結局なんにも分らないぢやないかと、母さまはひよつとするとお咎《とが》めになるかも知れません。それも致し方のないことです。現にこの千恵自身にも、さつぱり訳が分らないのですから。
 とにかくこれが、母さまのお求めになつた姉さまの消息について、千恵がさぐり出すことのできた全部です。もうこれで姉さまのことは御免をかうむりたいと存じます。姉さまが現にああして生きておいでになる以上、その消息をもとめる役目はこれで役ずみになる筈《はず
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