りましたよ。何が面白いのか、自分たちもわからずにね。
ロパーヒン 昔はまったく好《よ》かったよ。とにかく、存分ひっぱたいたからなあ。
フィールス (よく聞きとれずに)そりゃそうとも。昔は、旦那あっての百姓、百姓あっての旦那でしたものねえ。それが今じゃ、てんでんばらばらで、何がなんだかわかりはしねえ。
ガーエフ ちょっと待った、フィールス。あすわたしは、町へ出かけなければならん。ある将軍に引合わせてくれるという約束なんだ。その人が、手形で融通してくれそうなんでね。
ロパーヒン なあに物になりゃしませんよ。利子だって払えるもんですか、まあ安心してらっしゃい。
ラネーフスカヤ このひと寝言を言ってるのよ。将軍なんて、いるものですか。

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トロフィーモフ、アーニャ、ワーリャ登場。
[#ここで字下げ終わり]

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ガーエフ さあ、連中がやってきた。
アーニャ ママがいるわ。
ラネーフスカヤ (優しく)おいで、さ、こっちへ。……二人とも、いい子ね……(アーニャとワーリャを抱く)わたしがどんなにあなたがたを愛してるか、わかってくれたらね
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