る書簡
(三)処刑に先立つ四日、ウェストミンスタアの僧院長にしてメリイ女王|附《つき》牧師たりしフェッケンハムと試みたる信教問答
(四)処刑に先立つ数日間に綴《つづ》れる祈祷《きとう》文
(五)処刑に先立つ数週、塔中より父サフォオク公に宛てたる書簡
(六)処刑の前夜、最後の思出として希臘文新約聖書の巻尾に記して妹カザリンに与へたる訓戒
(七)処刑台上にて述べたる談話
(八)祈祷《きとう》書に挟める犢皮《こうしがわ》に記したる覚書《おぼえがき》(大英博物館所蔵)
試みにこのうちの(六)を、掻《か》いつまんで訳してみよう。――
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「愛《いと》しい妹カザリンよ、あなたにこの本を贈ります。この本の外側には黄金の飾《かざり》もなく巧みな刺繍《ししゅう》の綾《あや》もありませんが、中身はこの広い世界が誇りとするあらゆる金鉱にも増して貴いものです。これは主の掟《おきて》の書、主が私共哀れな罪人にと遺《のこ》された聖約また遺言なのです。これによれば私共は永遠のよろこびへと導かれませう。もしこの本を心|籠《こ》めて読みこの掟を守らうと心掛けるなら、あなたに不滅の生の
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