チェーホフの短篇に就いて
神西清

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)崎山正毅《さきやませいき》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)芸術的|叡知《えいち》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
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 先日、カサリン・マンスフィールドの短篇集を読む機会があって大変たのしかった。崎山正毅《さきやませいき》氏の訳も立派だと思った。中でも『園遊会』などは三度くりかえして読んだが、やはり面白さに変りはなかった。これに反し、『幸福』など、繰りかえして読むのはどうかと思われるような作品もある。何かしら匂いが強すぎるのである。それは寧《むし》ろ緩《ゆる》やかな忘却作用のなかで愉《たの》しんでいたいような作品だった。
 がとにかく、この人がチェーホフの唯一の後裔《こうえい》のように言われるのは予《かね》て耳にしていたものの、こうまでチェーホフ的なものを吾が物にしていようとは夢にも思わなかった。チェーホフ的? 人は恐らくそう
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