は飲まずにいられるうちは飲まないがいいよ。まあわたしがこうして、ちびりちびりやるといって、咎めだてはしないでおくれね――わたしは辛くってならないんだからね。けれどお前さんには、まだまだこの世に慰めがあろうというものさ。だってあの人は、神様のお計らいで、魔手をのがれたんだものねえ!……」
わたしは思わず、「死んだのだ!」と叫ぶと、とっさに自分の髪の毛をつかみましたが、見るとその髪が、わたしの髪の毛ではない、――白髪なんです。……なんてことだろう!
すると婆さんが、こう言いました、――
「しっかりおし、しっかりおし。お前さんの髪は、あの小部屋で、首に巻きつけた垂髪《おさげ》を人が解いてくれたその時から、もうまっ白だったんだよ。けれどあの人は生きてるよ。しかももう、責めも苛なみもされない境涯なんだよ。伯爵はあの人に、かいびゃく以来の恩典をほどこしたんだよ、――その話はその話で、夜が更けてからすっかりして上げるがね、まあも少し嘗めさせておくれよ。もうちっとやらないことにゃ……胸《ここ》んところが焼けつくようで、とんとやりきれないのさ。」
そう言いながら、ちびりちびりやるうちに、ぐっすり婆
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