「はつ恋」解説
神西清
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)憂愁《ゆうしゅう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三十五|歳《さい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](一九五二年晩秋)
−−
静かな深い憂愁《ゆうしゅう》が、ロシア十九世紀文学の特質を成していることは、今さら言うまでもなく周知の事実です。しかしその憂愁のあらわれは、それぞれの作家において、本質的にも色合いの上からも、微妙《びみょう》な差異を示しています。デンマークの文芸批評家ゲオルグ・ブランデスは、その点に触《ふ》れて、次のような簡明ではあるが味わいの深い評語を、のこしています。――「ツルゲーネフの悲哀《ひあい》は、その柔《やわ》らかみと悲劇性のすがたにおいて、本質的にスラヴ民族の憂愁であり、スラヴ民謡《みんよう》のあの憂愁に、じかにつながっている。……ゴーゴリの憂愁は、絶望に根ざしている。ドストエーフスキイが同じ感情を表白するのは、虐《しいた》げられた人々、とりわけ大いなる罪びとに対する同情の念が、彼《かれ》の胸にみなぎ
次へ
全6ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
神西 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング