ひて》に話《はなし》するものもなし。話《はなし》を聞《き》く者《もの》もなし。新《あたら》しい人間《にんげん》はなし。然《しか》し此頃《このころ》ハヾトフと云《い》ふ若《わか》い醫者《いしや》が町《まち》には來《き》たですが。』
『甚麼人間《どんなにんげん》が。』
『いや、極《ご》く非文明的《ひぶんめいてき》な、奈何云《どうい》ふものか此《こ》の町《まち》に來《く》る所《ところ》の者《もの》は、皆《みな》、見《み》るのも胸《むね》の惡《わる》いやうな人間計《にんげんばか》り、不幸《ふかう》な町《まち》です。』
『左樣《さやう》さ、不幸《ふかう》な町《まち》です。』と、イワン、デミトリチは溜息《ためいき》して笑《わら》ふ。『然《しか》し一|般《ぱん》には奈何《どう》です、新聞《しんぶん》や、雜誌《ざつし》は奈何云《どうい》ふ事《こと》が書《か》いてありますか?』
 病室《びやうしつ》の中《うち》はもう暗《くら》くなつたので、院長《ゐんちやう》は靜《しづか》に立上《たちあが》る。然《さう》して立《た》ちながら、外國《ぐわいこく》や、露西亞《ロシヤ》の新聞《しんぶん》雜誌《ざつし》に書《か》
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