う》の鐵格子《てつがうし》の内《うち》に住《す》んでゐやうが、此《こ》の幸福《かうふく》を有《も》つてゐるのでありますから。ヂオゲンを御覽《ごらん》なさい、彼《かれ》は樽《たる》の中《なか》に住《す》んでゐました、然《け》れども地上《ちじやう》の諸王《しよわう》より幸福《かうふく》で有《あ》つたのです。』
『貴方《あなた》の云《い》ふヂオゲンは白癡《はくち》だ。』と、イワン、デミトリチは憂悶《いうもん》して云《い》ふた。『貴方《あなた》は何《なん》だつて私《わたくし》に解悟《かいご》だとか、何《なん》だとかと云《い》ふのです。』と、俄《にはか》に怫然《むき》になつて立上《たちあが》つた。『私《わたくし》は人並《ひとなみ》の生活《せいくわつ》を好《この》みます、實《じつ》に、私《わたくし》は恁云《かうい》ふ窘逐狂《きんちくきやう》に罹《かゝ》つてゐて、始終《しゞゆう》苦《くる》しい恐怖《おそれ》に襲《おそ》はれてゐますが、或時《あるとき》は生活《せいくわつ》の渇望《かつばう》に心《こゝろ》を燃《も》やされるです、非常《ひじやう》に人並《ひとなみ》の生活《せいくわつ》を望《のぞ》みます、非
前へ
次へ
全197ページ中98ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
チェーホフ アントン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング