そ》れを聞《き》きませう。』
『其《そ》れは私《わたし》の權内《けんない》に無《な》い事《こと》なのです。まあ、考《かんが》へて御覽《ごらん》なさい、私《わたし》が假《かり》に貴方《あなた》を此《こゝ》から出《だし》たとして、甚麼利益《どんなりえき》が有《あ》りますか。先《ま》づ出《で》て御覽《ごらん》なさい、町《まち》の者《もの》か、警察《けいさつ》かが又《また》貴方《あなた》を捉《とら》へて連《つ》れて參《まゐ》りませう。』
『左樣《さやう》さ/\其《そ》れは然《さ》うだ。』と、イワン、デミトリチは額《ひたひ》の汗《あせ》を拭《ふ》く、『其《そ》れは然《さ》うだ、然《しか》し私《わたし》は如何《どう》したら可《よ》からう。』
アンドレイ、エヒミチはイワン、デミトリチの顏付《かほつき》、眼色《めいろ》抔《など》を酷《ひど》く氣《き》に入《い》つて、如何《どう》かして此《こ》の若者《わかもの》を手懷《てなづ》けて、落着《おちつ》かせやうと思《おも》ふたので、其寐臺《そのねだい》の上《うへ》に腰《こし》を下《おろ》し、些《ちよつ》と考《かんが》へて、偖《さて》言出《いひだ》す。
『貴方
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