を怒《おこ》つてゐなさるやうだが、まあ落着《おちつ》いて、靜《しづ》かに、而《さう》して何《なに》を立腹《りつぷく》してゐなさるのか、有仰《おつしや》つたら可《い》いでせう。』
『だが何《なん》の爲《ため》に貴下《あなた》は私《わたし》を這麼《こんな》ところに入《い》れて置《お》くのです?』
『其《そ》れは貴君《あなた》が病人《びやうにん》だからです。』
『はあ、病人《びやうにん》、然《しか》し何《なん》百|人《にん》と云《い》ふ狂人《きやうじん》が自由《じいう》に其處邊《そこらへん》を歩《ある》いてゐるではないですか、其《そ》れは貴方々《あなたがた》の無學《むがく》なるに由《よ》つて、狂人《きやうじん》と、健康《けんかう》なる者《もの》との區別《くべつ》が出來《でき》んのです。何《なん》の爲《ため》に私《わたし》だの、そら此處《こゝ》にゐる此《こ》の不幸《ふかう》な人達計《ひとたちばか》りが恰《あだか》も獻祭《けんさい》の山羊《やぎ》の如《ごと》くに、衆《しゆう》の爲《ため》に此《こゝ》に入《い》れられてゐねばならんのか。貴方《あなた》を初《はじ》め、代診《だいしん》、會計《くわいけ
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